設備投資をしたいけれど、資金の都合がつかず実行できない中小企業は少なくないと考えられます。
「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、設備投資などの資金を最大2億円助成できる、東京都独自の補助金制度です。設備投資を行いたい中小企業にとって、大変有用な制度だといえます。
この記事では、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」の制度概要を第12回(令和8年度第1回)公募をもとに解説するとともに、過去の活用事例も紹介します。
この記事を読めば、対象事業や助成率・助成額を始めとする制度の内容が分かるとともに、申請のスケジュールや採択のポイントなどが理解できます。
「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」とは?制度の概要

「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、東京都と東京都中小企業振興公社が運営する補助金制度です。設備投資などの費用の一部を助成し、中小企業の競争力強化・生産性向上・賃上げを支援することを目的としています。
対象となる事業者・事業
第12回(令和8年度第1回)の対象となる事業者は以下のとおりです。
- 令和8年4月1日時点で東京都内に本店または支店がある法人、または都内で開業届を出している個人事業主
- 都内で2年以上事業を継続していること
- 中小企業基本法が定める「中小企業者」、または中小企業等協同組合法などが定める「中小企業団体等」に該当する
- 大企業が実質的に参画していない(大企業の子会社などは対象外)
- 東京都に納税し、かつ税金等の滞納がないこと
等
助成の対象となるのは、税法が定める「固定資産」のうち、「機械装置」「器具備品」「ソフトウェア※」に該当するものです。これ以外の固定資産(建物や車など)や、固定資産に分類されないもの(リースやレンタルなど)は対象になりません。
※ソフトウェアは、パッケージ・アドオン・プラグイン等、既に仕様が決まっており販売されているものを対象とします。スクラッチ開発等、自社の要望に合わせた大掛かりな開発要素の あるものは対象となりません。
東京都以外に設備等を設置する時の注意点
東京都以外で設備等を設置できるのは神奈川県・埼玉県・千葉県・群馬県・栃木県・茨城県・山梨県のみで、これ以外は助成の対象にならないので注意しましょう。
また、設備等を東京都以外に設置する場合は、本店が東京都内にある必要があります。
3つの事業区分(申請区分)
ホームページ制作に補助金を使いたい読者にとって、最初に押さえるべき制度は小規模事業者持続化補助金です。ただし、この制度は「ホームページ制作そのもの」を支援する補助金ではありません。あくまで販路開拓等の取組を支援する制度であり、ホームページ関連費もその第12回の申請区分は下表のとおりです。前回とは区分が変わっているので注意しましょう。
| 区分 | 概要 |
| Ⅰ競争力強化 | 競争力強化のための設備等の導入(量産体制の構築・生産工程の改善・品質向上・コストダウンなど) |
| Ⅱ後継者チャレンジ | 事業承継やM&Aを契機として、事業多角化や事業転換などを行うための設備等の導入。 |
| Ⅲアップグレード推進 | 地域経済の中心となるべく成長するための設備等の導入(地域経済との連携・都内でのサプライチェーンの構築など) |
助成率・助成額
第12回の助成率と助成額は下表のとおりです。
| 事業区分 | 助成率 | 助成額 |
| Ⅰ競争力強化(中小企業者) | 通常コース:1/2以内ゼロエミコース:3/4以内賃上げコース:3/4以内 | 100万円~1億円 |
| Ⅰ競争力強化(小規模企業者) | 通常コース:2/3以内ゼロエミコース:3/4以内賃上げコース:4/5以内 | 100万円~1億円 |
| Ⅱ後継者チャレンジ | 通常コース:2/3以内ゼロエミコース:3/4以内賃上げコース:3/4以内 | 100万円~1億円 |
| Ⅲアップグレード推進 | 3/4以内 | 1億円~2億円 |
助成額は最大2億円で、助成率は助成対象経費の1/2から4/5以内となります。ゼロエミコースや賃上げコースの要件を満たすと、助成率が上がる仕組みです。
なお、Ⅲのアップグレード推進は、ゼロエミコースと賃上げコース両方の要件を満たさないと申請できません。
ゼロエミコースとは
ゼロエミコースとは、省エネに取り組む事業者が「ゼロエミッション概要書」などを提出することで申請できるコースです。審査の結果、省エネ効果が高い事業計画であると認められると、助成率が高くなります。
賃上げコースとは
賃上げコースとは、「賃金引上げ計画書」などを提出することで申請できるコースです。審査の結果、実効性の高い事業計画であると認められると、助成率が高くなります。
※賃上げコースで申請する場合、計画又は達成状況が確認できない場合は、3/4または4/5の助成率が適用されない場合があります。
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申請の流れ・スケジュール

第12回(令和8年度第1回)のスケジュール
第12回のスケジュールは下表のとおりです。
| スケジュール | 日時 |
| 申請受付 | 4月21日から4月30日まで |
| 1次審査(書類) | 5月中旬から6月中旬 |
| 1次審査結果通知 | 7月上旬 |
| 2次審査(面談) | 7月中旬から7月下旬 |
| 助成対象者決定 | 8月中旬 |
| 助成事業開始 | 9月1日~ |
助成対象期間は令和8年9月1日から最長で令和10年2月29日までで、この期間内に事業を開始して完了する必要があります。 また、助成金の交付は事業完了後になるので、つなぎ融資などで一旦立て替えなければなりません。
なお、面接審査の日時は東京都中小企業振興公社が指定するため、こちらの希望日時を指定したり、指定された日時の変更はできない点に留意しましょう。
第13回(令和8年度第2回)のスケジュール
第13回(令和8年度第2回)は以下のスケジュールで実施される予定となっています。
| スケジュール | 日時 |
| 申請受付 | 7月14日から7月23日 |
| 審査 | 8月中旬から10月末 |
| 助成対象者決定 | 11月中旬 |
| 助成事業開始 | 12月1日から |
第13回の詳細は、6月中旬以降に東京都中小企業振興公社のホームページで公開される予定です。
申請の際の注意点
「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」の申請は「Jグランツ」という電子申請システムでのみ受け付けており、郵送などでの申請は受け付けていません。
Jグランツを利用するには「GビズIDプライムアカウント」というアカウントが必要なので、申請前にアカウントを取得しておく必要があります。アカウントの取得は最大2週間程度かかる場合があるとされています。
申請は締切日間近だと混雑してデータのアップロードに時間がかかるため、できるだけ早めに申請するようにしましょう。
審査の流れと採択のポイント
審査は1次審査(書類審査)と2次審査(面談)があります。
審査は、目的との適合性や計画の妥当性、事業の実現可能性や成長・発展可能性などが基準となります。
1次審査
1次審査では、資格審査・経理審査・事業計画審査が行われます。
資格審査では、助成金の資格要件を満たしているか、必要書類に不備がないかなどが審査されます。そして経理審査では、財務の安全性・収益性・成長性が審査されます。
事業計画審査では、事業実施後3年から5年の間に、年率で3%以上従業員一人当たりの付加価値額(=労働生産性)が向上する見込みであることを示す必要があります。3年間で9%、4年間で12%、5年間で15%のうち、いずれかの実現が見込める計画を立てましょう。
2次審査
2次審査では、面接審査・価格審査・総合審査が行われます。また、必要に応じて現地調査が行われる場合もあります。
価格審査では、導入する設備の価格が市場価格に比べて高すぎないかなどを審査します。
加点措置
以下の条件を満たす事業者は、審査で加点措置を受けられます。
- 事業区分「Ⅰ 競争力強化」において、令和2年度までに公社が実施した「IoT、AI導入前適正化診断」又は「ロボット導入前適正化診断」を終了し、その診断結果に基づく申請者
- イ 事業区分「Ⅰ 競争力強化」において、公社が実施している「DX推進支援事業」、「生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業」、「企業変革に向けたDX推進支援事業」のいずれかの支援を受け、その支援内容に基づく申請者
- 事業区分「Ⅰ 競争力強化」において、公社が実施している「デジタル技術活用推進 緊急支援事業」の支援を受け、その支援内容に基づく申請者
- すべての事業区分において、東京都(環境局)に「地球温暖化対策報告書」を提出している申請者
- すべての事者区分において、東京都(環境局)に「地球温暖化対策計画書」、「特定テナント等地球温暖化対策計画書」のいずれかを提出している申請者
採択事例の紹介

最後に、過去に本助成金が採択された事例を2つ紹介します。
株式会社昭和石材工業所の事例(令和4年度 区分:競争力・ゼロエミ)
株式会社昭和石材工業所は、山から岩石を採取して、建設工事用の砕石を製造・販売している会社です。「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を活用して、山から採取した原石を一時破砕する「NE750」という機械を導入しました。
以前の破砕設備は油圧モーターで運転するものでしたが、老朽化でトラブルが頻発していたのに加えて、燃料消費量が大きいのも問題点でした。
一方、NE750は電気モーターで運転するため、燃料消費量を1/3に抑えることができます。加えて、油圧方式に比べてトラブルも少なく、生産性の向上およびCO2削減が実現できました。
竹内木材工業株式会社(令和3年度 区分:DX推進)
竹内木材工業株式会社は、住宅設備や建材の販売、および新築・リフォーム工事を手がける会社です。「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を活用して、新しい加工機や生産性設備のDX化などを導入しました。
以前は、加工機の老朽化および手作業の行程により、作業効率が低下しているのが問題でした。加えて、稼働率や進捗が把握できないなど、本社と工場の連携が悪いのも課題でした。
新しい加工機などの導入により作業効率を高めるとともに、DX化により本社と工場の連携も改善しました。これにより、生産性向上と顧客対応力強化が実現しました。
まとめ
「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、中小企業が競争力強化や生産性向上などを目指すことができる有用な制度です。東京都の事業者の方は、積極的に活用を検討しましょう。
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それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!

