コロナウイルスは私たちの生活にも多大なる影響を及ぼしていて、需要や売り上げの回復が期待しづらい中で飲食店にとっては厳しい状況が続いていることかと思います。事業再構築補助金は、そんなウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応する中小企業等の事業再構築を支援することを目的にした補助金で、多くの飲食事業者が活用しています。しかしながら、申請時に気を付けないと採択されない事案や、費用によって補助対象として認められないものもあります。
今回は、飲食店が事業再構築補助金を活用するにあたり、気をつけたほうが良いことについて解説していきたいと思います。
飲食店が事業再構築補助金を申請するに当たって、いくつか注意点があるのでそちらを見ていきましょう。
事業再構築補助金の申請要件に当てはまっているか
飲食店が事業再構築補助金を受け取るためには、次の要件を満たす必要があります。
〜主な申請要件〜
新型コロナ禍で売上が減っていること
・2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比2較して10%以上減少していること。
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組むこと
事業再構築補助金では、以下5つの類型に当てはまった取り組みを行う必要があります。
☆新分野展開
新分野展開とは、既存店舗スペースで新製品の提供を開始するなど、新製品・サービスで新市場に進出することをいいます。
例)カフェを経営する事業者が、店舗スペースの一部を改装し、パンのテイクアウト販売を開始。
☆事業転換
事業転換とは、飲食業を軸にすることは変更せずに、主要事業を転換することをいいます。
例)居酒屋経営店が、新たに焼肉店を開業。5年後までに焼肉店事業を会社の最も大きな収益源とする計画。
☆業種転換
業種転換とは別業種から飲食業に進出するなど、会社の主となる業種を変更することをいいます。
例)宿泊業事業者が、新たに飲食店経営を開始。5年後までに焼肉店事業を会社の最も大きな収益源とする計画。
☆業態転換
業態転換とは、店舗サービスを行っている事業者が出前サービスも開始するなど、商品やサービスの提供方法を変更することをいいます。
例)和食料理店が、新たに惣菜のデリバリー事業を開始。5年後までに、会社全体の10%以上をデリバリ-事業から生み出す計画。
☆事業再編
事業再編とは、会社法上の組織再編行為等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことを言います。
付加価値要件を満たした事業計画を策定すること
事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する。補助金額が3,000万円を超える案件は 金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グリーン成長枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり 付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。
*経済産業省 事業再構築補助金の概要https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0328一部抜粋
以上の3つが主な申請要件になります。
申請経費は補助対象のものか
事業再構築補助金は全ての経費が補助対象となるのではなく、一部補助対象外のものがあることに注意しなければなりません。下記が対象外に当たる経費です。
- 株式
- 従業員の人件費、旅費
- 光熱水費
- 車両
- 不動産の購入
- 汎用品
- 通信費
- 原材料費
- 消耗品費など
例に出すと、飲食店を宅配事業に転換する場合の「建物の改築費用」や「宅配を受注する新システム導入費用」は補助対象です。しかし、宅配するための車やシステム管理に使う「汎用パソコン」には補助はありません。その他にも注文用途だとしてもiPadや汎用タブレットなども同じく対象外になります。
建物費の用途について
主要経費で1番に活用したいのが「建物費・改築費」です。
理由としては2つあります。1つは建物費は金額が大きい反面、補助金によって補助される金額が大きいこと、もう1つは他の補助金ではほとんどの場合、建設費は補助の対象とならないということです。
そのため、特に飲食店経営で事業再構築を行う場合は、この建物費を上手く活用することが重要となりますが、いくつか注意する点もあるのでそちらも紹介していきたいと思います。
土地取得費用は基本的に補助金の対象外
上でも紹介しましたが注意してもらいたいのは、事業再構築補助金では不動産は補助の対象外になるという点です。
建物は補助の対象ですが、建物を建てるために必要な不動産の購入は補助の対象にならないということです。
ですので、新たに土地を購入して建設をするとなると多額な資金が必要になるので土地などは賃貸にするなどの方法をとった方が良いかもしれません。
新築物件購入にも制限がある
建物費の新築経費は、新築でなければいけないケースを除き、補助対象外とするということになっています。
実際、新築でなければいけないケースというのがどのようなケースなのかというのも経済産業省のホームページには明記されていません。
ですが、多くのケースで新築の建物費は補助対象外となると考え、建物費は改築が基本と思っていただけたら良いと思います。
補助金は後払い
・補助金は原則として後払いになっています。基本的には補助金が出るまでの間は、自社で必要経費を負担する必要があるのため、借入などで当座資金を工面するなど、資金計画に留意する必要があります。
ランニングコストの補助対象期間
クラウドサービス利用費、システム構築費は補助対象の経費ですが、ランニングコストで補助対象となるのは補助事業実施期間中に要する経費のみとなります。
例えばシステム構築費で専用のソフトをリースしていたとして、契約期間が補助事業実施期間を超えた場合のリース代金残債の支払いは補助の対象外となるということです。
最後に
冒頭でも紹介しましたが、事業再構築補助金は、コロナ禍により売上が減少した事業者が新たなビジネスに取り組むチャンスを与えてくれる補助金です。事業再構築と聞くと難しく考えてしまいがちですが、今回の補助金は対象となる経費も幅広く、飲食店は事業再構築の申請要件でもある「業態転換」などがしやすい業種です。既に多くの飲食事業者がデリバリーやテイクアウトへの転換を行っています。
このコロナ禍は新たな事業を始めるチャンスと考え、事業再構築補助金の利用を是非検討してみてはいかがでしょうか。
早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中