新規事業への挑戦は、企業経営にとって新たな収益基盤を築き、持続的成長につなげるために重要な経営戦略です。しかし、新規事業をはじめるためには、多額の資金が必要です。特に中小企業では、自己資金でまかなうにせよ、金融機関から融資を受けるにせよ、ハードルが高いと言わざるをえません。
そのような課題を解決するために活用できる制度が「中小企業新事業進出補助金」です。2026年3月27日には第4回公募要領が公開され、現行制度としては最後の公募となる見込みです。
今回の記事では、第4回公募の概要や第3回からの変更点、申請時に確認しておきたいポイントについて解説します。
「新事業を始めたいけれど資金繰りが難しい」「新事業進出補助金の変更点や申請時の注意点を知りたい」という方は、ぜひ参考になさってください。
① 中小企業新事業進出補助金とは?基本情報のおさらい

まずは「中小企業新事業進出補助金」の概要や基本情報を押さえておきましょう。
中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)は、中小企業等が既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業へ進出する際に必要な設備投資等を支援する制度です。新事業への前向きな挑戦を後押しするとともに、企業規模の拡大や付加価値向上を通じて生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
補助上限は従業員規模に応じて定められており、賃上げ特例の適用による引き上げを受けることもできます。また、補助率に関しても、地域別最低賃金引上げ特例を適用させることも可能です。
補助上限額と補助率をまとめると以下のようになります。
| 補助上限額 | 従業員数 | 補助金額 ※通常 | 補助金額 ※賃上げ特例の適用時 |
| 従業員数20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 | |
| 従業員数21~50人 | 4,000万円 | 5,000万円 | |
| 従業員数51~100人 | 5,500万円 | 7,000万円 | |
| 従業員数101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 | |
| 補助率 | 1/2 ※ただし、地域別最低賃金引上げ特例に該当する場合は2/3 | ||
本制度の前身ともいえる制度として「事業再構築補助金」があります。事業再構築補助金は、ポストコロナにおける経済社会の変化に対応するため、事業再構築に取り組む中小企業等を支援する制度でした。2025年3月の第13回公募をもって公募受付は終了しています。
新事業進出補助金は、事業再構築補助金に続く新たな支援策として、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する制度です。現行制度としては第4回公募が最後となる見込みであるため、活用を検討している事業者は、要件や変更点を早めに確認しておく必要があります。
② 第4回公募のスケジュール
第4回公募のスケジュールは以下のとおりです。
| 公募要領公開 | 2026年3月27日(金) |
| 申請受付開始 | 2026年5月19日(火) |
| 応募締切 | 2026年6月19日(金)18:00 |
| 採択発表 | 2026年9月頃予定 |
申請受付開始から応募締切までは約1ヶ月です。事業計画書の作成や必要書類の準備、見積書の取得、賃上げ要件の確認などには時間がかかります。さらに、一般事業主行動計画の公表手続きには1〜2週間程度を要するとされているため、申請を検討している事業者は、早めに準備を始めることが大切です。
なお、第4回公募は現行制度として最後の公募となる見込みです。第4回公募終了後は、ものづくり補助金との統合制度へ移行する予定とされているため、現行制度での申請を検討している事業者は、第4回公募の内容を確認しておきましょう。
③ 第3回からの主な変更点(ここがポイント!)

新事業進出補助金第4回公募では、第3回公募からいくつかの変更点があります。なかでも大きく変更されているのが、賃上げや最低賃金引上げなど、従業員の賃金に関する項目です。申請を検討している事業者は、第3回までの情報をそのまま参考にせず、第4回公募要領に沿って要件や提出書類を確認しましょう。
第4回の主な変更点をまとめると以下のようになります。
| 項目 | 第3回 | 第4回 |
| 地域別最低賃金引上げ特例 | なし | あり |
| 補助率 | 1/2 | 1/2※ただし、地域別最低賃金引上げ特例に該当する場合は2/3 |
| 賃上げ要件 | 以下のいずれか①一人当たり給与支給総額を、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる②給与支給総額を年平均成長率2.5%以上増加させる | 一人当たり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上増加させる |
| 加点項目 | 9項目 | 11項目 |
| 提出書類 | 基本的な添付書類と、該当する場合の条件付き書類を提出 | 第3回の書類に加え、最低賃金引上げ関連の特例・加点を希望する場合は、要件確認書類や賃金台帳の写しが必要 |
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
変更点① 地域別最低賃金引上げ特例の新設
第4回公募では、「地域別最低賃金引上げ特例」が新設されました。第3回公募では補助率が原則1/2でしたが、第4回公募ではこの特例に該当する事業者について、補助率が2/3に引き上げられます。
対象となるのは、2024年10月から2025年9月までの間に、補助事業の主たる実施場所で雇用している従業員のうち、「その期間の地域別最低賃金以上、2025年度改定後の地域別最低賃金未満」の賃金で雇用している従業員が30%以上となる月が3ヶ月以上ある事業者です。
たとえば、2024年度の地域別最低賃金が1,200円、2025年度改定後の地域別最低賃金が1,250円だった場合、時給1,200円以上1,250円未満の従業員が対象になります。適用可否は指定様式や賃金台帳の写しによって確認されます。
変更点② 賃上げ要件の一本化
第4回公募では、賃上げ要件も見直されています。
第3回公募では、「一人当たり給与支給総額を、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる」または「給与支給総額を年平均成長率2.5%以上増加させる」のいずれかを満たす必要がありました。
一方、第4回公募では、一人当たり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上増加させることが要件となっています。第3回のような選択式ではなくなったうえ、数値基準も都道府県によっては第3回に比べ引き上げられているため、賃上げ要件は第3回より厳しくなったと言っていいでしょう。
なお、補助上限を引き上げる賃上げ特例を利用する場合は、一人当たり給与支給総額を年平均成長率6.0%以上増加させることに加え、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より50円以上高い水準にする必要があります。
未達成の場合は、補助上限額の引き上げ分について全額返還が求められるため、返還リスクも踏まえて判断することが重要です。
変更点③ 加点項目の追加、提出書類の増加
第4回は、第3回と比べて加点項目や提出書類が増加しています。加点項目については、第3回にもあった9項目に加え、「地域別最低賃金引上げに係る加点」と「事業場内最低賃金引上げに係る加点」が設けられています。
地域別最低賃金引上げ加点は、2024年10月〜2025年9月の間で、一定水準の賃金で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3ヶ月以上ある事業者が対象です。
事業場内最低賃金引上げ加点は、2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、63円以上の賃上げをした事業者が対象です。
これらの特例や加点を希望する場合は、「地域別最低賃金引上げに係る要件を確認する書類」や「事業場内最低賃金引上げに係る要件を確認する書類」、賃金台帳の写しなどの提出が必要です。第4回では賃金に関する確認項目が増えているため、該当する事業者は早めに必要書類を確認しておきましょう。
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④ 申請の審査・採択のポイント
新事業進出促進補助金の利用は、単に「新事業を始める」だけでは認められにくい制度です。審査で高評価を受け、採択されるためには以下のような条件を満たす方が有利です。
新規性のアピール
申請時には、新事業進出要件として「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「新事業売上高要件」を満たしていることを示す必要があります。
ここで重要なのは、既存事業の単なる延長や従来商品の改良にとどまらず、自社にとって新しい製品・サービスや、これまで対象としていなかった市場・顧客層に進出する取り組みであることです。
また、事業計画では「新市場性」または「高付加価値性」を説明する項目もあります。
高付加価値性を示す場合は、単に「価値が高い」「独自性がある」と主張するだけでは不十分です。一般的な相場価格や付加価値と比較し、自社の新製品・サービスが高い価値や価格を実現できる根拠を、客観的なデータ・統計等を用いて示すことが重要です。
賃上げ目標は実現可能性を重視した設定
賃上げに関する要件や加点項目は、採択可能性だけでなく、採択後の実行可能性も踏まえて検討する必要があります。
賃上げ要件や賃上げ特例の目標を達成できなかった場合、補助金の返還義務が生じる可能性があります。
加点や特例を狙って無理な賃上げ目標を設定するのではなく、売上計画や資金繰りを踏まえて、達成可能な計画を立てることが重要です。
認定支援機関との連携を検討する
新事業進出補助金の申請では、認定支援機関との連携も有効です。認定支援機関とは、国の認定を受けた中小企業の支援機関で、税理士、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが該当します。
認定支援機関の利用自体が申請条件や加点項目になっているわけではありません。しかし、専門知識や客観的な分析が求められる申請手続きにおいて、認定支援機関などの外部支援者から助言を受けることは、事業計画の精度を高めるうえで役立つでしょう。
⑤ 活用事例イメージ

新事業進出補助金は、既存事業で培った技術やノウハウを活かしながら、これまでとは異なる製品・サービスや高付加価値分野へ進出する取り組みに活用できます。
たとえば、機械加工業者が既存の精密加工技術を活かし、半導体製造装置部品の製造に進出するケースが考えられます。単なる設備の更新や既存事業の拡大ではなく、これまで製造していなかった分野の部品に取り組み、新たな市場での売上を目指す点がポイントです。
また、建設業者が木材に関する知見を活かし、オーダーメイドの木製家具を製造するケースや、畳製造業者が畳製品に触れられるカフェ・ものづくり体験施設を展開するケースも、活用イメージとして挙げられます。既存事業の延長にとどまらず、自社の強みを活かして新しい価値を生み出すことが重要です。
ただし、既存商品の販売先を変えるだけ、既存設備を更新するだけといった内容では、新事業として十分に評価されない可能性があります。申請時には、製品・サービスや市場にどのような新規性があるのか、また一般的な相場や付加価値と比べてどのような高付加価値化が見込めるのかを、客観的なデータも踏まえて説明する必要があります。
※上記はあくまで活用イメージであり、同様の内容で申請すれば採択されるというものではありません。実際の審査では、事業計画の具体性や新規性、市場性、高付加価値性、収益性などが総合的に判断されます。
⑥ 第4回公募後の制度動向と申請時の注意点
中小企業庁の概要資料では、第4回公募後の次年度以降について、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として公募を予定している旨が示されています。
そのため、第4回公募をもって、現行の「中小企業新事業進出補助金」としての公募は終了し、今後はものづくり補助金と統合された新制度へ移行することが見込まれます。
現行の中小企業新事業進出補助金として申請を検討している事業者にとって、第4回公募は重要な機会となります。申請受付期間や要件、提出書類を確認し、早めに準備を進めましょう。
まとめ
新事業進出補助金の第4回公募について、概要や第3回からの変更点、採択されるためのポイントについて解説しました。中小企業にとって、多額の資金が必要になる新事業開拓はハードルが高いものです。しかし、補助金を活用することで、高付加価値事業への進出や利益拡大、従業員の待遇向上を目指しやすくなります。
一方で、新事業進出補助金を活用するためには、まず自社の新規事業計画が補助金の趣旨に合致しているかを確認する必要があります。また、申請には必要書類の正確な準備や、客観的なデータ・根拠資料の収集、綿密な売上計画の策定が求められます。専門的な知識や煩雑な手続きが必要になる場面も多く、自社だけで進めるのは難しいと感じることもあるでしょう。
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それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!

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