序章:人手不足時代の「省力化投資」と、一般型の事業計画書

近年、多くの中小企業で人手不足が経営課題として深刻化しています。こうした人手不足への対応策のひとつとして、国は「省力化投資」を後押しする制度を用意しており、その代表例が省力化補助金です。
省力化補助金の制度全体の概要や、カタログ型/一般型の違い、対象経費、申請の流れなどを先に押さえたい方は、以下の記事をご覧ください。
- 省力化補助金(カタログ型)の制度概要:省力化補助金(カタログ型)制度概要
- 省力化補助金(一般型)の制度概要: 省力化補助金(一般型)制度概要
本記事では、省力化補助金(一般型)の事業計画書作成のコツに絞って解説します。補助金は計画書(事業者情報・事業計画書)の内容に基づき、事務局が書面審査を行います。本補助金の書面審査で見られる観点は、公募要領上、次の通り整理されています。
書面審査は、(1)適格性(2)技術面(3)計画面(4)政策面の4区分で評価されます。全体像を下表に整理します。
書面審査で見られる項目
| 区分 | 見られるポイント |
|---|---|
| (1)補助対象事業としての適格性 | 対象事業・対象者・申請要件・補助率等を満たしているかが見られます。 |
| (2)技術面 | 省力化指数・投資回収期間・付加価値額(年平均成長率)・オーダーメイド設備の4観点で適切な事業かどうかが評価されます。 |
| (3)計画面 | スケジュール等が具体的か、収益性・生産性・賃金が向上する計画か等を評価します。 |
| (4)政策面 | 国の経済政策として支援すべき取組かが評価されます。 |
このように、一般型は大きく4つの観点から様々な視点で事業計画が評価されます。本記事では、上記の書面審査項目を前提に、特に計画書で差が出やすいポイントを中心に、作成手順と書き方のコツを整理していきます。
また、申請書は「記載量」で評価されません。簡潔にまとめることが前提ですが、根拠(数字の前提・算出、定性要因等)を省かないことが重要になります。分量の目安としては、A4で10ページ程度に収めると、簡潔さと説明の過不足のバランスを取りやすくなります。極端に短いと、必要な根拠や背景が不足している印象になりやすいため、「短くする」よりも「要点と根拠を落とさずに整える」ことを意識すると良いでしょう。
以降の章では、計画書作成を「事業計画の整理→投資内容→制度選定→要件整理→計画書作成」という順番で整理し、解説します。
第1章:「申請の前準備(進め方)」を押さえる
事業計画書はいきなり文章を書き始めると論理がぶれやすくなったり、書き進めてから補助金の要件と合致しない部分がでてきたりしてしまいます。先に「申請に向けた前準備の進め方」を固定しておくと、論理のズレや書き直しが減り、必要な根拠も揃えやすくなります。基本の流れは、次のステップで進めるのがおすすめです。
申請の前準備(推奨ステップ)
| ステップ | やること | この段階で固めるポイント |
|---|---|---|
| Step1 | 事業計画の整理 | 経営課題 → 投資で解決したいこと → 投資後の姿(成果) |
| Step2 | 投資内容を固める | 導入設備・システムの候補出し |
| Step3 | 補助金の選定 | 省力化補助金の基本要件が合うか |
| Step4 | 要件整理 | 3〜5年計画/労働生産性/賃上げ等を満たせる体制か |
| Step5 | 事業計画書作成 | 上記棚卸しした内容をその1〜その3に「根拠付きかつ論理的」に落とし込む |
この表から分かる通り、事業計画書の文章作成(Step5)は最後です。特にStep1〜4が曖昧なまま書き始めると、後で「要件に合わない」「数字の前提が崩れる」「制度目的とズレる」といった手戻りが発生しやすくなります。まずは前準備で論点と根拠を揃え、そのうえで計画書に落とし込む流れにしておくと、A4で簡潔にまとめる際にも崩れにくくなります。
第2章:事業計画の全体概要の整理(Step1の中身)

Step1の「事業計画の整理」は、計画書の骨格です。ここが弱いと、設備の説明はできても「なぜ必要で、どう成果につながるか」が伝わりません。整理すべき要素は大きく4つで、先に棚卸ししておくと後半が一気に書きやすくなります。
まずは、整理すべき項目を箇条書きで確認します。
- 現状分析(事実・数値で)
- 人員・作業量・業務の詰まり・待ち時間・転記・段取りなどのボトルネック
- 経営課題(1〜3個に絞る)
- 生産性が下がる原因/売上機会を逃している理由
- 投資の目的(課題と制度目的を一致)
- 「省力化による生産性向上」、「付加価値向上・賃上げ」をどのように成し遂げるか
- 投資後の姿(成果の定義)
- どの工程がどう変わり、誰の作業が何分減り、時間を何に再配分するか
- その結果が付加価値・利益・賃金にどうつながるか
この4点は、単に「書く項目」ではなく、審査観点の土台になります。特に一般型では「成果の定義」が曖昧だと、省力化指数や付加価値の説明も薄くなり、投資の妥当性(回収)にも説得力が出にくくなります。したがって構想段階から棚卸しし、論理的に説明できるようにしておくことをおすすめします。
第3章:投資内容を固める(Step2の中身)
事業計画の骨格ができたら、次は投資内容です。ここで重要なのは、その投資が経営課題の解決に資するか、そして投資として妥当かを先に判断することです。省力化補助金(一般型)では、「投資回収期間」など投資妥当性の観点も評価対象になるため、この段階での整理がそのまま計画書の説得力につながります。
投資内容を固める際は、まず次の観点で「採用すべき投資か」を判断できる状態にしておくと、計画書の記載もぶれにくくなります。以下に本ステップで整理すべき事項を記載します。
- 課題解決への直結性
- その投資によって、現状のボトルネック(人手不足、処理能力不足、品質・納期の不安定、ムダな手戻り等)がどのように改善するかを整理する
- 投資回収の見通し(投資としての妥当性)
- 回収期間がどの程度になりそうかを概算し、「何によって回収するのか(売上増・原価削減・工数削減等)」の前提を置く
- 自社の資金力・資金手当てとの整合
- 補助金は後払いのため、自己負担分に加えて支払いタイミングも含めて実行可能か(手元資金/借入の見込み等)を確認する
- 見積取得と金額の確定(計画書の根拠づけ)
- 投資全体金額・補助申請金額の根拠として、見積を取り、金額の前提を固める
ここまで整理できると、計画書では「自社の課題に対して、この投資が有効で、かつ投資として妥当で、資金面でも実行可能である」という形で、論理的に記載できます。特に一般型では、後々の計画書で投資回収期間や資金手当ての見通しにも触れることになるため、この段階で「判断の根拠」を先に揃えておくことが重要です。
第4章:補助金の選定(Step3の中身)

投資案が固まったら、省力化補助金の一般型が本当に適しているかを判断します。一般型で重要なのは「人手不足/省力化投資」が目的の事業であるかどうかです。カタログ型や他制度と比較して、制度目的との適合が高いものを選ぶことが、結果的に計画書の説得力を上げます。
加えて、制度選定の段階で必ず押さえておきたいのが「基本要件に合っているか」です。一般型は、そもそも基本要件(例:労働生産性や賃上げ等)を満たす前提で申請する制度のため、要件に合わない計画のままでは申請しても採択・交付に結びつきません(第5章で詳しく記載)。
そのため、制度目的との適合(人手不足→省力化投資の筋が通るか)を確認しつつ、同時に「要件を満たせる計画になっているか」もこの段階でセットで確認しておくことが重要です。この時点で要件との一致が難しい場合、他の補助金の方が適合する場合もあります。自社にあった制度について知りたい方は当社でも無料相談を行っているのでお気軽にご相談ください。
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第5章:要件整理(Step4の中身)
制度の適合が見えたら、次は要件です。一般型は、要件を満たさないと審査に進む前に止まってしまうため、文章作成に入る前に必ずチェックします。ここでは、押さえるべき要件を整理しておきます。
要件整理でチェックする項目
- 3〜5年の事業計画が前提
- 基本要件(例)
- 労働生産性:年平均成長率(CAGR)+4.0%以上
- 1人当たり給与支給総額:年平均成長率+3.5%以上
- 目標設定・達成が必要
- 未達リスクを踏まえて前提を固める
ここは特に注意が必要です。目標値を達成できなかった場合、達成率に応じて補助金の返還を求められる旨が公募要領で示されています。したがって、計画上は「机上の数字」ではなく、実現可能性の高い前提で置くことが重要になります。
第6章:事業計画書作成(Step5:その1〜その3に落とし込む)
事業計画書は「項目を埋めること」自体が目的ではありません。重要なのは、現状分析→課題の特定→投資内容→期待効果→実施体制→定量計画が、一本のストーリーとしてつながっているか、そしてそれを論理的かつ簡潔に説明できているかです。
このつながりが弱いと、個別の文章が良くても「なぜその投資が必要で、なぜその効果が出るのか」が伝わりにくくなります。指定のフォーマットリンクを以下に記載します。
まず、その1・その2は「補助事業の具体的取組内容」と「会社全体の目標数値」との整合性が伝わる構成にします。書く項目は次の通りです。
- その1、その2:事業者の概要(現状分析・経営課題)、省力化投資の具体(投資全体金額・補助申請金額)
- 1-1 現状分析
- 1-2 経営課題
- 1-3 活用の動機・目的
- 2-1 業務プロセス/配置のビフォーアフター、投資全体金額・補助申請金額
- 2-2 期待効果(省力化)+会社全体への波及効果
- 財務計画、実施体制、スケジュール
- その3:会社全体の事業計画
- 付加価値・労働生産性・賃上げの見込みを前提付きで示す(数値根拠の置き場)
上の構成を、横断的にチェックするための観点を表に整理します。作成・見直しの際は、各行がつながっているかを確認すると崩れにくくなります。
| 流れ | 何を示すべきか(要点) | よくある注意点 |
|---|---|---|
| 現状分析 | 事実・数値で「いま何が起きているか」を説明 | 体感だけで書いて根拠が薄い |
| 課題の特定 | 現状から原因を絞り、課題を1〜3個に整理 | 課題が多すぎて投資目的が散る |
| 投資内容 | 課題に対して「なぜその投資が効くか」を説明 | 設備説明が中心で課題との関係が弱い |
| 期待効果 | 省力化・付加価値へのつながりを前提付きで提示 | 効果が抽象的、数字の前提がない |
| 実施体制 | 誰が・何を・いつまでにやるか(遂行可能性) | 自社に実施できるリソースがあるかどうかが不透明(資金体力があるか定量的に説明できていないなど) |
| 定量計画 | 付加価値/労働生産性/賃上げの数値が整合 | その2の効果と、その3の数字がつながらない |
この表から分かることは、「現状分析の弱さ」が後工程すべてを弱くするという点です。だからこそ、計画書の完成度を上げるうえで「現状分析→課題の特定」を丁寧に行うことが重要になります。
現状分析で押さえたい「分析の範囲」(例)
現状分析は、社内の話だけで終わらせず、可能な範囲で外部環境も含めて整理しておくと、課題設定や投資の妥当性が説明しやすくなります。例えば、次のような観点です(3C分析と言われる手法になります)。
- 自社の現状(内部)
- 人員・工数・処理能力・稼働率・ムダ・手戻り・待ち時間など(可能なら数値)
- どこでボトルネックが発生しているか(工程・業務単位で)
- 自社の強み等
- 市場(外部)
- 需要動向、顧客ニーズ、価格動向、受注の増減など
- ※ここは推測ではなく、可能なら統計や業界資料など根拠(エビデンス)を添えることが望ましい
- 競合・代替(外部)
- 競合がどのように省力化・DXを進めているか(分かる範囲で)
- 自社が遅れると何が起きるか(納期・品質・コスト・採用など)
こうした現状分析ができていると、課題→補助事業(投資)の流れに「抜け漏れがないか」「論理が飛んでいないか」がわかりやすくなります。
ここまでの内容を文章だけでゼロから組み立てようとすると、どうしても漏れや重複が起きがちです。そこで有効なのが、フレームワークで情報を一度「型」に入れてから文章化するやり方です。審査員側も読み取りやすくなり、結果として「論理的で簡潔な説明」につながりやすくなります。
現状分析でよく使われるフレームワークの例としては、上記3C分析のほかに、自社分析として使われるSWOT(強み・弱み・機会・脅威)などがあります。SWOTの考え方は、中小機構の解説記事が分かりやすいので、参考として添付します。
第7章:生成AI活用の注意点

ここまで計画書の作成のコツを紹介してきましたが一方で、最近は生成AIで計画書のたたき台を作れるようになりました。構成案の作成や文章の下書きなど、一定のクオリティを短時間で作れる点はメリットです。一方で、一般型の申請では「文章が整っていること」以上に、事実関係の正確さと審査項目に沿った論理構成が求められます。
生成AIを使う際に実務で注意したい点は、主に次の3つです。
- 事実と異なる内容を“それらしく”書いてしまうことがある
前提条件や数字、制度要件などが混ざると、もっともらしい文章でも内容が誤っているケースがあります。 - アピールしたい内容を、意図通りに強調してくれないことがある
自社が本当に伝えたい強みや優先順位が、文章の中で薄くなる(逆に不要な部分が膨らむ)ことがあります。 - 審査項目に沿った記載にならない場合がある
省力化指数・投資回収・付加価値・体制・スケジュール等、求められる観点に対して「書くべき根拠」が抜けたまま仕上がってしまうことがあります。
このため、生成AIは「一定のクオリティのたたき台」を早く作る用途には向きますが、採択を目指す水準(根拠の妥当性、整合性、説明可能性)まで引き上げるには、人の目での確認と修正、そして人が論理構成を作成することが必要になります。特に、書面審査の後に口頭審査がある場合は、計画全体を自社の言葉で説明できる状態にしておくことが前提になります。
当社では、経営のプロがStep1の構想段階からご相談に乗り、事業計画の整理(現状→課題→投資→効果→体制→定量計画)が一本のストーリーとして成立しているかを確認します。そのうえで、公募要領の審査項目に沿って、論理の筋・数値根拠・整合性の不足や矛盾が出やすいポイントを洗い出し、修正の方向性を整理します。
また、「そもそも一般型が適しているか」「カタログ型や他制度の方が目的に合うのではないか」といった制度選定から一緒に検討することも可能です。構想が固まり切っていない段階でも構いませんので、気になる方はお気軽に無料相談をご活用ください。
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早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中



