序章:採択率を“補助金選び”に使用する考え方

補助金は、申請すれば誰でも受け取れるものではありません。多くの制度では、事業者が事業計画書などの申請書類を提出し、その内容を審査側が確認したうえで、採択(通過)か不採択(落選)かが決まります。つまり補助金は、ざっくり言えば「書類で審査される公募制度」です。
ここで実務上、意外と見落とされがちなのが、採択率は補助金の制度ごと、さらには公募回ごとに違いがあるという点です。同じ会社であっても、どの補助金を選ぶか、同じ補助金でもどの公募回に応募するかによって、採択・不採択の結果が変わる可能性があります。
そこで本記事では、主要な補助金について直近の採択率(または交付決定率)を整理し、採択率から「競争が激しそうに見える補助金」「相対的に競争が緩やかに見える補助金」を読み解いていきます。一方で、採択率を絶対的な判断基準にするのではなく、補助金選びのひとつの判断材料として活用することが重要です。
第1章:直近3回の採択動向一覧と、数字を見るときの前提
序章で述べた通り、採択率は「この補助金が良い/悪い」を決めるためのものではありません。一方で、直近の採択率を並べてみると、制度ごとに“競争が激しそうに見えるもの”と、“相対的に競争が緩やかに見えるもの”が出てきます。本章では、細かい解釈に入る前に、採択率を一覧で整理して全体感をご説明します。
1-1. まず押さえたい前提:採択率は制度ごとに「見え方」が変わる
同じ採択率でも、制度が違えば意味合いが変わります。たとえば、設備投資系の補助金と、新規事業系の補助金では、計画で説明すべき内容が変わります。すると、申請の作りやすさや、申請が集まりやすさも変わります。また、採択率は公募回によって変動します。申請が集中する回もあれば、比較的落ち着く回もあります。
- 採択率(交付決定率)は「制度目的・審査の観点・申請母数」に影響される
- 同じ制度でも、公募回によって申請数が変動する
- 制度によっては「採択」ではなく「交付決定」を公表する(例:IT導入補助金)
この前提を踏まえたうえで、次に直近2〜3回の採択率を一覧にします。
1-2. 直近2〜3回の採択率一覧
以下に主要補助金の採択率(または交付決定率)をまとめました。なお本表の採択率は、公式に公表されている申請数・採択数(交付決定数)から「採択数÷申請数」で再計算した値です。
| 制度 | 前回公募 | 前々回公募 | 3回前公募 | 傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 省力化補助金(一般型) | 66.8%(第3回) | 60.9%(第2回) | 68.5%(第1回) | 採択率は高水準 |
| 新事業進出補助金 | 37.2%(第1回) | ― | ― | 3割台と低水準 |
| IT導入補助金(通常枠) | 35.5%(6次) | 37.1%(5次) | 34.1%(4次) | 3割台と低水準 |
| IT導入補助金(インボイス枠) | 44.9%(6次) | 47.4%(5次) | 43.3%(4次) | 通常枠より高め |
| ものづくり補助金 | 33.6%(20次) | 31.8%(19次) | 35.8%(18次) | 3割台と低水準 |
| 小規模事業者持続化補助金(一般型<通常枠>) | 51.1%(第17回) | 37.2%(第16回) | 41.8%(第15回) | 回によって採択水準が変動 |
採択率のまとめを見ると、省力化補助金(一般型)は一定の高水準で推移しています。一方、ものづくり補助金は直近3回がいずれも3割台で、省力化補助金と比較すると一定の厳しさがうかがえます。新事業進出補助金も初回から3割台でスタートしており、計画の説得力が問われる制度として運用されている様子がうかがえます。
また小規模持続化補助金は比較的高い採択率で推移している回もある一方で、公募回の採択率にブレがあります。ただし、ここで注意したいのは、採択率が高い制度が必ずしも「簡単」というわけではないことです。逆に、採択率が低めに見える制度でも、会社の状況や投資内容が制度目的に合えば、十分に狙えるケースはあります。
参考資料(公式発表ページ)
- 省力化補助金(一般型)採択結果
- 新事業進出補助金 採択結果
- IT導入補助金2025 交付決定事業者一覧(申請数・交付決定数)
- ものづくり補助金 採択結果
- 持続化補助金(一般型<通常枠>第17回)採択結果(中小機構)
- 持続化補助金(第16回)採択結果(中小企業庁)
- 持続化補助金(第15回)採択結果(中小企業庁)
第2章:制度別に見る「直近の採択率から何が推察できるか」
第1章で主要補助金の採択率(交付決定率)を並べると、補助金ごとに採択率が違うことが分かりました。この章では、その数字を出発点にして、補助金別に「なぜそう見えるのか」「どんな会社に向きやすいのか」を整理していきます。
ここでの注意点は第1章と同じです。採択率だけで結論を出すのではなく、あくまで補助金選びの判断材料のひとつとして活用します。
2-1. 省力化補助金(一般型):採択率が高水準に見える背景は「人手不足」との相性か

省力化補助金(一般型)は直近3回で6割台が続き、他の補助金と比較すると採択率が高水準に見えます。この背景として考えられるのは、日本全体で「人手不足」が深刻化しており、政府としてもそれが成長の制約になり得るという問題意識を強めている点です。
- 内閣府の年次経済財政報告では、企業の人手不足感が高い水準にあることや、人口動態を背景に労働供給の制約が長期化し得る点が整理されています。
- この問題意識を踏まえると、人手不足の改善に直結しやすい「省力化投資」は、政策課題と重なりやすい投資テーマのひとつと言えます。
こうした背景から、省力化補助金は現在の政策トレンドと合致した制度として扱われ、結果として採択率が相対的に高く見えている可能性があります。ただし、採択率が高いからといって簡単な制度というわけではありません。事業計画、投資内容の妥当性、効果の根拠、見積や仕様の整合など、審査で見られるポイントを外すと不採択になります。採択率は“追い風に見える”程度に捉えるのが安全です。
省力化補助金(一般型)の具体的な制度内容や要件、対象となる投資内容については、別記事で詳しく解説しています。
参考資料:内閣府「令和6年度 年次経済財政報告 第2章 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題」
2-2. 新事業進出補助金:初回から3割台=「挑戦支援」でも計画の説得力が重要
新事業進出補助金は初回公募から採択率が3割台となっており、他の補助金と比較すると低めに見えます。ここから推察されるのは、「新規事業に取り組むこと」自体は支援対象である一方で、計画の完成度や説得力がより強く求められる制度として運用されている可能性がある、という点です。
- 新規事業は不確実性が高く、市場性・競合優位性・実行体制・収益性などの説明が多くなりやすい
- 説明項目が増えるほど、計画の作り込み度合いで差が出やすい
そのため新事業進出補助金では、誰に売るのか、競合に対してどう差別化するのか、実行体制は整っているのか、売上・利益の見通しは妥当か、といった点まで含めて、事業計画の中で丁寧に説明することが求められます。新事業進出補助金の制度概要や要件については、別記事で詳しく解説しています。
2-3. IT導入補助金:通常枠は3割台中心。枠の違いで採択率が変わる

IT導入補助金は、通常枠とインボイス枠で、採択率(正確には交付決定率)の見え方が異なります。直近の結果を見ると、通常枠は3割台を中心に推移している一方で、インボイス枠は4割台で推移しており、枠によって通過率に差があることが分かります。
- 同じIT導入補助金でも「どの枠を選ぶか」が結果に影響しやすい
- 計画内容だけでなく、要件確認・入力・添付書類の不備など手続き面の影響を受けやすい
また、IT導入補助金は「採択」ではなく「交付決定」として結果が公表されます。数字を見るときは、制度が公表している指標(採択・交付決定)を混同しないことが大切です。
2-4. ものづくり補助金:3割台中心=“説明の質”で差が出やすい可能性
ものづくり補助金は、直近3回の公募がいずれも3割台中心で推移しています。ここから言えそうなのは、ものづくり補助金が「設備を導入すれば評価される制度」ではなく、革新性や付加価値向上といった投資の意味を、事業全体の中で論理的に説明することが求められる制度であるという点です。
- 新技術・新製品・生産プロセス高度化など、「何がどう変わり、どう付加価値が高まるか」を説明する必要がある
- 投資の目的が多様になりやすく、ストーリーが分散すると説得力が弱まりやすい
そのため、「何のための投資なのか」「この投資が将来にどうつながるのか」を明確に絞り込み、一本のストーリーとして整理することが重要になります。制度概要は別記事で詳しく解説しています。
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2-5. 小規模事業者持続化補助金:採択率は比較的高めだが、回によってブレる可能性

小規模事業者持続化補助金は、他の補助金と比べると比較的高めの採択率で推移している公募回がある一方で、公募回ごとに採択率のブレが見られる制度です。
- 商工会・商工会議所と連携して申請するため、形式や構成は一定水準にそろいやすい
- その分、「書き方」よりも「中身(課題と取組のつながり、商圏・顧客理解、実行可能性)」が分かれ目になりやすい
- 派手な投資よりも、等身大の課題認識と実行可能な取組が伝わるかが重要になりやすい
持続化補助金(一般型)の活用方法は別記事で解説しています。
第3章:採択率が高めに見える制度を、どう優先順位に落とすか
ここまで見てきた通り、補助金は制度ごとに採択率(交付決定率)の見え方が大きく異なります。ただし、採択率が高い制度に飛びつけばよい、というわけではありません。重要なのは、「自社が抱えている課題」と「補助金の制度目的」が一致しているかどうかです。
たとえば、省力化補助金(一般型)は採択率が高めに見えますが、それは「人手不足という課題に対して、省力化投資でどう改善するか」というストーリーを描きやすい側面があるため、と整理できます。裏を返せば、人手不足や業務効率化と関係の薄い投資を無理に省力化補助金で申請すると、計画の説得力は弱くなりやすいとも言えます。
そこで本章では、採択率を制度選びに落とし込む際の考え方例を、次の表に整理します。
| 判断軸 | 見るポイント | 例 |
|---|---|---|
| 自社課題との一致 | 制度目的と課題が噛み合うか | 人手不足なら省力化、販路課題なら持続化など |
| 成長につながるか | 一時的な効果で終わらず、将来の売上・利益に結びつくか | 業務効率化による負担軽減、販路拡大による売上増など |
| スケジュール | 締切・準備期間に間に合うか | 書類の量、見積取得、社内体制、認定支援機関との調整など |
この表から分かることは、採択率はあくまで入口の情報であり、最終的には「目的一致」「投資の意味」「準備可能性」をセットで判断する必要がある、という点です。採択率は高くても、自社課題と制度目的がズレていれば計画が弱くなりやすく、逆に採択率が低めでも、目的一致と計画の整合が取れていれば十分に検討余地があります。
終章:まとめ。採択率は“判断材料の一つ”であり、答えではない
採択率(交付決定率)は、補助金選びにおける重要な参考情報です。ただし採択率だけで「簡単そう」「難しそう」と決めつけるのではなく、制度目的と自社課題の一致度、成長に繋がるか、準備期間なども含めて総合的に判断することが重要です。
本記事では、主要補助金の直近の採択率を整理し、制度ごとの見え方を整理しました。当社では、各種補助金の制度内容のご説明に加え、事業者様の状況に合った補助金かどうかについて、無料でご相談を承っています。「どの補助金を選ぶべきか迷っている」「自社の取り組みが対象になるのか分からない」といった段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
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それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!

早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中


