設備投資や新サービス開発を検討している中小企業にとって、注目すべき補助制度の一つが「ものづくり補助金」です。
2025年度の第20次公募では、生産性向上の取り組みがものづくり補助の枠では無くなったなど、過去の公募と比べて制度設計にも変化が見られます。
この記事では、ものづくり補助金の制度概要から対象者、補助内容、申請の流れ、他制度との違いまでをわかりやすく解説します。
「自社は対象になる?」「どんな取り組みが通りやすい?」と気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
ものづくり補助金の制度概要

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)は、革新的なサービス開発や試作品開発に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する制度です。国が掲げる「成長と分配の好循環」実現に向け、労働生産性の向上や付加価値の増加、地域経済の活性化を目的としています。
2025年度・第20次公募では、補助対象の要件や枠の構成に一部変更が加えられています。賃上げ目標の設定や、インボイス制度への対応状況に応じた加点評価など、申請にあたって留意すべき点も多くなっています。
補助金の金額・補助率・対象経費
ものづくり補助金の主な補助枠と内容は以下の通りです。
■ 主な補助枠と補助上限額
枠名 | 従業員規模 | 補助上限額※1 | 補助率 |
製品・サービス枠高付加価値枠 | 5人以下 | 750万円 (850万円) | ・中小企業者:1/2以内・小規模事業者/再生事業者:2/3以内・賃金引き上げ特例:2/3 ※2 |
6~20人 | 1,000万円(1,250万円) | ||
21~50人 | 1,500万円(2,500万円) | ||
51人以上 | 2,500万円(3,500万円) | ||
グローバル枠 | ー | 3,000万円 (4,000万円) | 中小企業者:1/2以内、小規模事業者:2/3以内 |
※1 括弧内の補助額は大幅な賃上げに取り組む事業者に対して、補助額を上乗せした額です。
(大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例)
※2 所定の賃金水準の事業者が最低賃金の引上げに取り組む場合、補助率が2/3に引き上げとなります。
■ 補助対象経費
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費
- 外注費、知的財産権関連経費
※機械装置費がメインであり、単価50万円(税抜)以上の設備を導入することが必須要件となっております。
対象となる企業の特徴と注意点

本補助金の対象は、「中小企業基本法」に定められる中小企業・小規模事業者で、日本国内に本社および事業実施拠点を有する法人・個人事業主です。
■ 向いている企業の特徴
- 新製品・新サービスの開発、または革新的な生産設備の導入を計画している企業
- 賃上げ要件をクリアできる企業(年平均成長率2.0%以上など)
第20次公募での大きな変更点と省力化補助金との違い
2025年度・第20次公募では以下の変更点があります:
2024年度までは、生産性向上を目的とした設備投資も「ものづくり補助金」の対象に含まれていましたが、制度改正により現在はその対象が見直されています。
第20次公募以降、生産性向上に特化した取り組みは「省力化補助金(一般型)」が主な支援制度となり、ものづくり補助金は1. 製品・サービス枠(高付加価値化)、2. グローバル市場開拓枠の2つに整理されています。
つまり、「ものづくり補助金」は今後、革新的な製品・サービスの開発や海外展開など、新たな価値創出を伴う投資に特化した制度となっています。
■ 省力化補助金との違い
比較項目 | ものづくり補助金 | 省力化補助金(一般型) |
主な目的 | 新製品・サービスの創出、革新 | 業務の省人化、省力化 |
補助上限 | 最大4,000万円 | 最大1億円 |
対象設備 | オーダーメイド・開発投資向き | 汎用設備・既存技術応用も可ではあるが、オーダーメイド性が問われる |
対象となる経費の実例

補助金申請を進めるうえで、最も重要かつ誤解が多いのが「何に使えるのか」という点です。
ものづくり補助金では、対象となる経費があらかじめ公募要領で定められており、対象外の支出については補助を受けることができません。
以下に対象例と対象外の例を記載しました。
■ 対象となるもの(一部)
- 専用機械装置の購入・導入費
- 生産ライン自動化のためのロボット・制御装置
- 新サービス提供のためのシステム構築費
■ 対象外の例
- 広告宣伝費
- 業務効率化のみに寄与し、革新的な新製品・サービスの提供に関連しない設備投資(業務効率化関連の設備投資は省力化補助金やIT導入補助金が適します)
- 汎用的な事務用パソコン、スマホ、タブレット
広告宣伝費や省力化に資する設備投資は、「ものづくり補助金」の対象経費には該当しません。
たとえ事業計画上で広告宣伝が必要であっても、「ものづくり補助金」では広告費は対象外とされています。ただし、「小規模事業者持続化補助金」であれば、一定の要件のもと広告宣伝費が補助対象となる可能性があります。
詳しくは以下のリンクから、ご覧ください。
また、省力化を目的とした設備投資については、従来は「ものづくり補助金」の対象でしたが、現在は「省力化補助金(一般型)」の創設に伴い、対象外となりました。これにより、同様の投資は「省力化補助金」の一般型にて申請する形へと変更されています。
また、事務用パソコンやスマートフォンは家庭でも使用可能で、汎用性が高く業務専用と証明することが困難なため対象外となります。
申請から交付までの基本フロー
補助金は、単に「申請して終わり」ではなく、採択・交付・報告まで一連の流れを踏まえたスケジュール管理が求められます。
とくに、電子申請(Jグランツ)や事前準備(GビズID取得など)を怠ると、申請そのものが間に合わなくなるリスクもあるため、全体像を把握しておくことが不可欠です。
以下に補助金の基本的なフローを記載しました。
- 公募要領の確認
- GビズIDプライムアカウントの取得(未取得の場合)
- 事業計画書等の準備・添付資料の作成
- Jグランツ(電子申請システム)を通じて申請
- 書面審査 → 採択発表(数ヶ月後)
- 交付申請 → 採択後の事業開始
- 実施 → 実績報告 → 補助金の確定支払
※補助金の交付は「後払い」である点に注意が必要です。
他の補助金との違いと使い分けのポイント
設備投資や業務改善を検討する中小企業にとって、複数の補助金制度が存在しますが、それぞれに目的や対象範囲が異なります。ここでは「ものづくり補助金」と他の主要補助金との違いを整理し、自社に合った制度選びの参考となるようポイントをまとめます。
補助金名 | 主な目的 | 上限額 | 特徴 |
ものづくり補助金 | 革新的な製品・サービス導入のための設備投資 | 4,000万円 | 新製品・プロセス開発向け |
省力化補助金(一般型) | 業務の自動化・省人化 | 最大1億円 | 労働力不足対応に強み |
IT導入補助金 | ソフト・ITツール導入 | 最大450万円 | デジタル化推進に特化 |
小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・業務改善 | 最大250万円 | 広告・販促等も対象 |
申請前に取り組むべき準備と相談先の活用方法
補助金申請は、前もって余裕を持って準備を始めることが大切です。
とくに、ものづくり補助金のように事業計画の完成度や数値根拠が重視される制度では、直前の準備では間に合わないことも多く、思わぬ部分で抜けや漏れが生じてしまうリスクがあります。
以下に、準備しておくべき主な項目と、相談先の一例をまとめました。
■ 申請前の準備項目
- 自社の経営課題と事業方針の整理
- 導入予定設備・サービスの具体化
- 効果見込みの数値化(売上・付加価値・生産性)
- GビズIDの取得とJグランツ環境の確認
■ 相談先として活用できる主体
- 商工会・商工会議所
- 認定経営革新等支援機関
- 中小企業診断士や専門コンサルタント
補助金申請は書類作成や制度理解に一定の専門性が求められるため、早めに相談体制を整えることが成功の第一歩となります。
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本日はものづくり補助金について最新情報をまとめました。
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それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!

早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中