IT導入補助金の不採択率をご存知でしょうか。
IT導入補助金事業の公式ホームページからの統計データによると、IT導入補助金の不採択率は概ね50%程度となっており、2件のうちに約1件が不採択となっている状況です。
ただ、申請が難しい等の理由により、申請まで辿り着けなかった事業者も含めると、実際にはもっと高い不採択率となっている事が予想できます。不採択となった事業者においては、不採択となった理由が気になるところですが、残念ながら不採択となった理由は公表されていません。
そこで、この記事では、補助金申請のプロとして補助金の申請をコンサルタントしてきた経験を元に、「IT導入補助金が不採択となってしまう理由」について、4つのポイントを解説していきます。
IT導入補助金が不採択となる理由とは
要約すると、次の4点です。
- 申請の対象外となる事業者に該当している
- 申請の対象外となる事業に該当している
- 申請内容に生産性向上の効果が認められない
- 申請内容に不備がある
それでは詳しく解説していきます。
申請の対象外となる事業者に該当している
IT導入補助金は日本国に登記され日本国内で事業を行う中小企業事業者等が申請対象者ですが、実は、IT導入補助金の要項において、申請の対象外となる事業者について記載されています。
そのため、一見、申請対象となっていても、実は申請対象外であるという事が想定されます。
申請の対象外となる事業者は具体的には下記のいずれかに該当する事業者です。
- 次の①~⑥のいずれかに該当する事業者
① 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
② 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
③ 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等
④ 発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・ 小規模事業者等
⑤ ①~③に該当する中小企業・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小 企業・小規模事業者等
⑥ 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等
なお、ここでいう大企業とは、「2-2-1 申請の対象となる事業者及び申請の要件」内、(1)申請の対象となる中小企業・小規模事業者等の定義に規定する中小企業・小規模事業者等以外の者であって、事業を営む者をいう。ただし、次のいずれかに該当する者については、大企業として取り扱わないものとする。
> 中小企業投資育成株式会社法に規定する中小企業投資育成株式会社
> 投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定する投資事業有限責任組合 - IT導入補助金 2022 において「IT導入支援事業者」に登録されている事業者
※昨年度事業以前の事業にて登録されている場合はこの限りではない。
※IT導入支援事業者の代表者および役員の経営する企業等が、補助事業者として申請を行 った場合、その申請は無効となる。 - 経済産業省又は中小企業庁から補助金等指定停止措置又は指名停止措置が講じられている事業者
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する「風俗営業」、「性風俗関連 特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営む事業者(旅館業法第3条第1項に規定する許可を受 け旅館業を営む事業者(風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律第2条第6項に規定する店舗型性風 俗特殊営業を営むものを除く)を除く)
- 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係者
- 宗教法人
- 法人格のない任意団体(例)同窓会、PTA、サークル等
- その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに事務局が判断する者
申請に当たっては、申請の対象外となる事業者に該当していないか、よく確認するようにしましょう。申請対象者については下記の記事で詳しく紹介させていただいております。
申請の対象外となる事業に該当している
IT導入補助金の補助対象事業は、ITツールやITソフト、PCやタブレット等の導入、インボイス制度も見据えたデジタル化等の事業となります。
一方で、IT導入補助金の公募要項には、申請の対象外となる事業についても記載されています。申請の対象外となる事業は、具体的には下記のいずれかに該当する事業です。
- 幅広く業務をカバーするものではなく、入力したデータを単純計算にて帳票やグラフ・表等に印刷するまたは画面等に表示する等、単一の処理を行う機能しか有しないもの(例:会 計業務全般カバーする機能を有するものではなく、請求書作成機能のみのソフトウェアなど)
- 購入済のソフトウェアに対する増台や追加購入分のライセンス費用、また既存ソフトウェアに対するリビジョンアップのための費用
- ホームページと同様の仕組みのもの(情報の入力、保存、検索、表示等の簡易的な機能しかないもの)ただし、分析機能や指示機能、演算処理、制御などのプログラムは対象となる
- ホームページ制作ツールやブログ作成システム等で制作した簡易アプリケーション
- 一般市場に販売されていないもの、特定の顧客向けに限定されたもの
- 製品が完成されておらず、スクラッチ開発が伴うソフトウェア。過去に特定顧客向けに開発したコード(開発実績)を他の顧客に再利用し、その顧客の要件に合わせ追加スクラッチ開発を伴うもの
- 業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの
- ハードウェア製品(大分類Ⅳハードウェアで認められる経費を除く)
- 特定のハードウェア機器を動作させることに特化した専用システム等の組込み系ソフトウェア(例:タッチペンに組み込まれたシステム、印刷機に搭載された制御システム (デジタル化基盤導入類型で補助対象と認められるPOSレジ・モバイルPOSレジ・券売機を除く))
- 恒常的に利用されないもの(緊急時等の一時的利用が目的で生産性向上への貢献度が限定的なもの)
- 広告宣伝費、広告宣伝に類するもの
- 単なる情報提供サービスや、会員登録しWEB上でサービスの提供を受ける仕組みのもので 業務機能を有さないもの
- ホームページ制作、WEBアプリ制作、スマートフォンアプリ制作、コンテンツ制作(V R・AR用、教育・教材用、デジタルサイネージ用)、単なるコンテンツ配信管理システ ム
- 業務の効率化を図るものではなく、補助事業者が販売する商品やサービスに付加価値を加え ることが目的のもの
- 補助事業者の顧客が実質負担する費用がソフトウェア代金に含まれるもの(売上原価に相 当すると事務局が判断するもの)
- 料金体系が従量課金方式のもの
- 対外的に無料で提供されているもの
- リース・レンタル契約のソフトウェア
- 交通費、宿泊費
- 交付決定前に購入したソフトウェア
- 補助金申請、報告に係る申請代行費
- 公租公課(消費税)
- その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに補助金事務局 が判断するもの
申請に当たっては、申請の対象外となる事業に該当していないか、よく確認するようにしましょう。
なお、下記の記事において採択事例の視点からITツールを解説しています。合わせてご参照ください。
申請内容に生産性向上の効果が認められない
IT導入補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者等を支援する制度です。つまり、申請した内容により、生産性が向上するということが必須条件となります。
例えば、申請の内容が、ITツールの単なる買い替えや更新、業務システムの単なる追加投資といった場合には、生産性の向上に寄与するのかという点で疑問を持たれるため、結果として、不採択となってしまう事が想定されます。
自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識をよく検討した上で、申請した内容により生産性が向上するかどうかを判断するようにしましょう。
申請内容に不備がある
補助金コンサルタントとして各種補助金の申請をサポートしてきましたが、IT導入補助金が不採択になる最も多い理由は、申請内容の不備という印象を持っています。
申請内容の不備とは、具体的には、申請情報の入力ミスや必要書類が足りないケースのことです。書類に不備があると、申請内容が採択に足りうる内容であったとしても、不採択になってしまうため、非常に勿体無いです。
補助金の申請書は書類枚数や記載内容が多いことに加え、添付書類も多く、人的な不備が生じがちです。気をつければ避ける事ができる初歩的なエラーだけに、例えば、申請内容を第三者に確認してもらう等、申請内容のチェック体制を整えるようにしましょう。
IT導入補助金の補助金が採択されるために
IT導入補助金が不採択となってしまう理由について、4つのポイントを解説してきました。
要約すると、
- 申請の対象外となる事業者に該当している
- 申請の対象外となる事業に該当している
- 申請内容に生産性向上の効果が認められない
- 申請内容に不備がある
という場合に、不採択となってしまう事が想定されるということになります。
IT導入補助金を申請する際には、こうした不採択となる理由を踏まえて申請いただくことで、不採択になる可能性を減らす事ができるものと思われます。
補助金のプロによる無料相談を!
この記事ではIT導入補助金が不採択となる理由について、4つのポイントを解説してきました。特に、申請対象外かどうかという点は比較的容易に判断できるので最初に気をつけたいところです。
その一方で、「作成した申請書の内容に不備がないか」「生産性の向上に寄与する内容となっているかどうか」という点については、自社内で評価することは難しい部分もあります。同時に「そもそもITツールとはなに?」「自社で使える補助金あるのか?」という悩みもあると思います。
こうした悩みについては、補助金申請のプロにアドバイスをもらうのも一手です。
特に、補助金申請プロサポートでは、補助金申請にお悩みの方向けに、無料相談を実施中です。
補助金申請のプロとして、豊富な採択実績のある補助金申請のプロが補助金のお悩みにお答えしますので、補助金のお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。
早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中