長引くコロナ禍により、事業の再構築が課題になっている飲食店が増えています。しかし、事業再構築補助金の仕組みは複雑であり、テイクアウトやデリバリーで事業再構築補助金が活用できるかわからず、次の一歩が踏み出せない経営者もいることでしょう。
経済産業省の行う「令和2年度第3次補正・令和3年度補正予算中小企業等事業再構築促進事業」において、テイクアウトやデリバリーで事業再構築補助金が活用できるかについて詳しく解説いたします。
飲食店の新規出店や開業に事業再構築補助金は活用できるのか?
飲食店の新規出店や開業に事業再構築補助金は活用できます。
たとえば、経済産業省が発行している「事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)」7.0版によると、居酒屋を経営していたものの、コロナ禍により売り上げが減少した場合、店舗での営業を停止した上で、オンライン専用の弁当宅配事業を新たに開始するといった業態転換の例が示されています。
もちろん、事業再構築補助金は、業態転換による新規出店や開業だけでなく、新分野展開での新規出店や開業も対象になります。
テイクアウト・デリバリーで補助金を使える費用例
建物内装費
建物内装費は事業再構築補助金の対象になります。
経済産業省の事業再構築補助金のリーフレットに「中小企業等事業再構築促進事業の活用イイメージ」として、喫茶店経営をしていた店舗の飲食スペースを改装して縮小し、新しくコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施した例が挙げられています。
この場合、「店舗縮小に係る建物改修の費用」が補助経費として対象になります。
このことからもわかるように、賃貸物件の改装費は建物内装として補助経費を活用できます。このほか、賃貸物件の原状回復や建物の撤去、建物の建築にも補助経費の活用が可能です。
しかし、建物の建築の場合、必ず「建物を新しく建てることが補助事業の実施に必要不可欠であること」と「既存の建物を改築するなどの代替手段がないこと」を説明しなければなりません。
また、家賃をはじめ、建物の保証金や敷金、土地の購入、建物の単なる購入は補助経費の対象外です。
テイクアウト・デリバリー商品調理用の機材
テイクアウト・デリバリー商品調理用の機材は事業再構築補助金の対象になります。
宅配を始める際に必要となる保冷庫をはじめ、真空包装機や器、業務用フライヤー、炊飯器などの厨房機や調理機器がこれにあたります。
テイクアウト・デリバリー商品調理用の機材は上記新規性要件の「②主要な設備を変更すること」に該当します。ただし、既存の製品の製造に使用している設備で新たな製品の製造ができる場合は、新規性要件を満たさないため対象外になります。
デリバリー車両の冷房設備やキッチンカーの厨房設備
デリバリー車両の例簿設備やキッチンカーの厨房設備は事業再構築補助金の対象になります。これは「車両に載せる設備及びその設備の設置に必要な費用は補助の対象 <引用:事業再構築補助金事務局ホームページ 「よくあるご質問【補助対象経費】」>」に該当するためです。
しかし、公道を走る車両本体の購入費用は業再構築補助金の対象外のため、注意が必要です。このほか、デリバリー用のバイクリースやレンタルに付随する保険、自動車税、各種整備点検費、車検費、駐車料代、ガソリン代、有料道路通行料も事業再構築補助金の対象外となります。
ただし、デリバリー代行サービス等に係る初期登録料、デリバリー代行サービス等に係る月額使用料、デリバリー代行サービス等に係る配送手数料、デリバリー用のバイクリース料やレンタル料は事業再構築補助金の対象になりますが、最長3ヵ月しか対象にはならないため、注意が必要です。
広告宣伝費
広告宣伝費は業再構築補助金の対象になります。
業態転換や新分野展開などで宣伝が必要となった場合、チラシなどの広告作成費や印刷物制作費をはじめ、テイクアウトやデリバリー、キッチンカーのPRを目的としたPR映像制作費や雑誌やホームページへの広告掲載費、テイクアウトやデリバリー、キッチンカーの PR を目的としたWEBサイトなどの制作委託費、看板やPOP、のぼりなどの制作費がこれにあたります。
ただし、チラシの作成や広告をSNSにアップロードするためのパソコンやスマートフォン、プリンター、プリンターのインクなどの汎用品の購入費は補助経費の対象外のため注意が必要です。
テイクアウト・デリバリーで補助金を申請する場合の注意点
既存事業の強みを活かしているか
テイクアウト・デリバリーで事業再構築補助金を申請するには、既存事業の強みを活かす必要があります。
レストランやカフェなどの飲食店を経営していたものの、コロナ禍により思うように集客ができず、売り上げが減少したことにより、飲食スペースを減らして、テイクアウト用のお弁当の販売や料理のデリバリーサービスを始めることなどがこれに当たります。
既存事業であるレストランやカフェの経営をしながら、テイクアウト用のお弁当やデリバリー用の料理を調理できるため、既存事業の強みをしっかり活かしているといえます。
テイクアウト・デリバリーサービスの需要が高いエリアでの出店か
テイクアウト・デリバリーで事業再構築補助金を申請するには、テイクアウト・デリバリーサービスの需要が高いエリアでの出店であることが必要です。
たとえば、弁当店が新分野展開として、高齢化が問題となっている地域で高齢者向けの食事のデリバリーを開始した場合、地域の高齢化のニーズに対応しているため、需要の高いエリアの出店という条件を満たしていることになります。
新規事業を行うにあたり、人員や財務面で問題はないか
テイクアウト・デリバリーで事業再構築補助金を申請するには、新規事業を行うにあたり、人員や財務面に問題がないか確認する必要があります。新規事業を遂行するための人員が確保できているか、投資内容が自社の財務状況に見合ったものか、という点が着目されます。
また、補助事業が終了した3~5年後に営業利益・人件費・原価償却費を足した付加価値額の年率が平均3.0%以上増加している見込み、また従業員1人当たりの付加価値額の年率が平均3.0%以上増加している見込みがなければなりません。これらを見込んだ事業計画を策定ができていることが申請時には必要となります。
テイクアウト・デリバリー事業で事業再構築補助金を活用した事例
ここでは、テイクアウト・デリバリー事業で事業再構築補助金を活用した事例を一覧でご紹介致します。
事業者名 | 事業計画名 | 事業計画の概要 |
オムライス専門店アロハ | ウィズコロナ地域密着型配達代行システム開発と雇用を創出 | コロナ禍でデリバリー事業が急成長。地域密着型宅配代行サービスで売上が低迷する飲食店を中食市場で支える。消費者を集めて便利で操作が簡単ですぐに注文ができるECサイトを立上げ、加盟店を集めて新たな収益を確保。補助金を活用しアフターコロナで集客が落ち込んだ飲食店の売上を手助けする。成果報酬手数料で加盟店は初期費用なしにサービスが開始できる。 |
株式会社いそつー | 中華食堂の新メニュー開発およびDXを活用したデリバリー事業への挑戦 | 新型コロナ人流制限による影響は甚大であり、他力本願で回復を待つのみではなく、WEBオーダーによるデリバリー事業へ参入するとともに、店頭でのセルフオーダーシステム等のDXを最大限に活用する事でV字回復を目指す。 |
株式会社S.U.G | シェフが作る”道産素材と和牛のプレミアムバーガー”デリバリー事業 | 減収が続くレストラン事業を支える新たな売上の柱として、”プレミアムハンバーガー”のデリバリーを開始。高級ステーキレストランだから仕入できる希少ブランド和牛を100%使用する。既存事業の食品ロス問題も解決するハイリターンな再構築を目指す。 |
株式会社真珠苑ホールディングス | 自社の経営資源を活用したウィズコロナ時代に対応する事業再構築 | コロナ禍で主力事業である飲食事業が大きな打撃を受けている。これまでの飲食事業で培った経営資源をウイズコロナ時代に対応すべくテイクアウト・デリバリー、ネット販売に参入し事業再構築を図る。 |
炭火いちば じゅう。 | コロナ禍における収益改善のための店舗改革 | 当店のフードバーORANGE店は、酒類の提供がメインで、収益の悪化が続いております。そのため、新分野展開として、デリバリーやテイクアウトをメインとしたネネチキンの製造販売を実施したいと考えております。 |
株式会社tipu | コワーキングスペース「ティプ」を活用したテイクアウト・デリバリー・EC事業 | 夜の飲食店経営スタイルから脱却し、弊社所有の空きビルを活用したコワーキングスペースとテイクアウト、そこで扱う人気商品のネットショップを構築する。 |
最後に
事業再構築補助金は、飲食店のテイクアウト・デリバリーのさまざまな経費が対象となるため活用できます。事業再構築補助金の公募要領を確認し、自社の強みを活かした魅力的な事業計画書を策定・申請し、テイクアウト・デリバリーの事業展開に事業再構築補助金を役立てましょう。
早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中