東京都内で事業を営む中小企業の皆様にとって、設備投資は競争力強化や事業拡大の重要なカギとなります。しかし、まとまった資金が必要な設備投資は、多くの企業にとって大きな負担となることも事実です。
そんな中、東京都が実施している「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、最大2億円という大型の助成金で中小企業の設備投資を力強くサポートしています。本記事では、この制度の詳細について分かりやすく解説します。
※本記事執筆次点で第10回のスケジュールが公表されましたが、同回の公募要領が発表前であるため、本記事は令和7年度第9回募集要項を参考に作成しています。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは
なぜ東京都がこの補助金を実施しているのか
東京都は、都内中小企業の持続的な成長と競争力強化を目的として、本制度を令和3年度から実施しています。特に、「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を進める企業を支援することで、東京の産業全体の底上げを図っています。
都独自の手厚い支援が魅力
この助成金の最大の特徴は、その支援規模の大きさです。助成額は100万円~2億円と非常に幅広く、国の補助金制度を上回る規模での支援を受けられます。単なる設備購入支援ではなく、企業の成長戦略や経営革新につながる投資を重点的に支援している点も大きな特徴です。
補助対象者と申請要件
どんな企業が対象になるのか
申請できるのは、東京都内に登記簿上の本店または支店があり、都内で2年以上事業を継続している中小企業者等です。個人事業主の場合は、都内で開業届出をして事業を営んでいることが条件となります。
興味深いのは、設備の設置場所についてです。原則として都内設置が必要ですが、設置場所が神奈川県・埼玉県・千葉県・群馬県・栃木県・茨城県・山梨県に所在し、かつ本店が東京都内にあることが必要な場合も対象となります。
対象外となるケース
以下のような事業者は申請できません。
- 大企業やその子会社・関連会社
- みなし大企業(実質的に大企業に支配されている事業者)
- 都税を滞納している事業者
- 風俗営業など、一部の業種
5つの事業区分から選択
本助成金では、事業の目的に応じて5つの区分が設けられています。
Ⅰ. 競争力強化
更なる発展に向けて競争力強化を目指した事業展開及び必要となる機械設備を新たに導入する事業。働き方改革推進として、運送・物流、建設業での人材不足対策も含まれます。
Ⅱ. DX推進
IoT、AI、ロボット等のデジタル技術の活用により、新しい製品・サービスの構築や既存ビジネスの変革を目指した事業展開に必要な設備導入。
Ⅲ. イノベーション
都市課題の解決に貢献し国内外において市場の拡大が期待される産業分野において、新事業活動に取り組むことで、イノベーション創出を図るために必要となる機械設備の導入。
Ⅳ. 後継者チャレンジ
事業承継を契機として、後継者による事業多角化や新たな経営課題の取り組みに必要となる設備等の導入。
Ⅴ. アップグレード促進
競争力強化及び生産性向上を実現し、地域経済の中心となるべく成長するために必要となる機械設備の導入。
助成金額と助成率
区分ごとの詳細な助成内容
助成率と助成限度額は、選択する事業区分によって異なります。

助成率を引き上げる方法
ゼロエミッション要件(省エネルギー効果が高い取組)や賃上げ要件(一定の賃上げを実施する場合)を満たすことで、助成率の引き上げが可能です。
特に賃上げ要件については、賃金引上げ計画(※)を策定し、実施した場合に適用されます。
(※)「給与支給総額」及び「事業所内最低賃金」を一定額以上引き上げる計画
補助対象経費
対象となる設備・システム
機械装置、器具備品、ソフトウェアの新たな導入、搬入・据付等に要する経費が対象となります。ただし、1基50万円(税抜)以上のものに限定されています。
具体的には以下のような設備が対象となります。
- 製造設備や自動化機器(機械装置費)
- IoT関連機器やソフトウェア(システム導入費)
- 事業遂行に必要な建物付属設備の一部
対象外となる費用
以下は助成対象外となります。
- 運転資金(人件費、家賃、光熱費など)
- 汎用品(一般事務用PC、プリンター、複合機など)
- 中古品、リース料、保守費用
実際の助成事例
建設業での活用事例:手押し鉋版・スライドソーの導入
都内の建設関連企業では、木材加工技術の高度化を図るため、手押し鉋版・スライドソーを本助成金で導入しました。この機械装置により、以下の効果を実現しています。
- 削る作業の省力化:従来の手作業による調整工程が大幅に削減され、作業効率が向上
- 加工精度の均一化:手作業から機械化されることで均一な加工が可能に
- 短納期の実現:加工工程の自動化・技術力の高度化により、短納期化
このような具体的な効果を事業計画書で示すことで、審査での高評価に繋がります。
申請から交付までの流れ
令和7年度第10回のスケジュール(最新情報)
- 申請予約期間:令和7年8月22日~9月24日
- 申請受付期間:令和7年9月19日~10月2日
- 助成対象者決定:令和8年2月上旬
第10回の募集が間もなく開始されますので、申請をご検討の方は今からでも準備を進めることをおすすめします。特に、GビズIDの取得には時間がかかるため、お早めにご準備ください。
申請に必要な準備
申請には事前に以下の準備が必要です。
GビズIDプライムアカウントの取得
「gBizIDプライム」アカウント作成には、審査で原則2週間程度かかるため、早めの準備が必要です。
事前の申請予約
申請を行うには、公式ホームページから事前に申請予約を行う必要があります。申請予約期間は限られているため、できるだけ早めに手続きを進めることをおすすめします。
事業計画書の作成
設備投資による売上拡大や生産性向上を具体的な数値で示すことが重要です。
履歴事項全部証明書、納税証明書、見積書等の取得
その他にも申請者によって申請に必要な書類は変わるため、必ず公募要領の最新版をご確認ください。
審査の流れ
書類審査・面接審査の二段階審査が実施されます。書類審査の通過者のみが面接審査へ進むシステムとなっています。
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採択されるためのポイント
審査のポイント
審査では以下の点が重視されます。
ア 資格審査(一次審査)
本助成事業の資格要件に合致しているかを審査されます。
イ 経理審査(一次審査)
財務内容の【○ア 安全性、○イ 収益性、○ウ 成長性】について審査されます。
ウ 事業計画審査(一次審査・二次審査)
事業計画の【○ア 目的との適合性、○イ 優秀性、○ウ 実現性、○エ 成長・発展性、○オ 計画の妥当性】について審査されます。
エ 価格審査(二次審査)
機械設備が、一般的な市場価格に対して著しく高額でないかを審査されます。
加点要素を活用
助成金申請にあたって加点措置があります。特に以下の点が重要です。
- 東京都(環境局)に「地球温暖化対策報告書」を提出している申請者(令和5年度実績又は令和6年度実績について提出したもの)
- 東京都(環境局)に「地球温暖化対策計画書」、「特定テナント等地球温暖化対策計画書」のいずれかを提出している申請者(令和5年度実績又は令和6年度実績について提出したもの)
その他にも、事業区分「Ⅱ DX推進」において公社が実施している「デジタル技術活用推進緊急支援事業」の支援を受け、その支援内容に基づく申請者なども加点措置を受けることが出来ます。詳細は公募要領の最新版をご確認ください。
申請時の重要な注意点
賃上げ要件での申請について
賃上げ要件で申請する場合、助成金交付は2回に分割して実施されます。
- 1回目:優遇を受けない助成率で算出された金額
- 2回目:賃金引上げ計画の達成確認後の差額分
また、全従業員の賃金台帳の写しの提出が必要で、基準日が属する月の前月から遡る12か月間の全従業員分の提出が求められます。
早期準備の重要性
第10回の申請受付まで時間が限られているため、以下の準備を今すぐ始めることをおすすめします。
- GビズIDプライムアカウントの申請(2週間程度必要)
- 事業計画の検討と数値シミュレーション
- 設備メーカーからの見積書取得
- 必要書類の整理
まとめ|設備投資で企業成長を加速させるために

東京都の「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、都内中小企業にとって大きな成長機会を提供する制度です。
本制度の特徴
- 最大2億円の大型助成(助成率最大4/5以内)
- 5つの事業区分で幅広い成長戦略をサポート
- 賃上げ計画やゼロエミ要件で助成率の優遇措置あり
- 全業種対象で申請可能
成功のポイント
- 事業計画書での具体的な効果の明示
- 複数社からの見積書取得
- GビズIDの早期取得
- 書類不備のない完璧な申請準備
第10回の募集開始まで時間が限られています。設備投資は企業の未来への投資です。この制度を活用して、自社の競争力強化と持続的成長を実現するため、今すぐ準備を始めましょう。
※最新の詳細情報については、必ず東京都中小企業振興公社の公式ウェブサイトで最新の募集要項をご確認ください。
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早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中