第1章:事業承継・M&A補助金の全体像

事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者が事業承継やM&Aを行う際に必要となる設備投資や専門家費用の一部を補助する制度です。単なる事業の継続支援にとどまらず、「承継を我が国の経済の活性化」と捉えて支援する点が特徴です。
制度の目的
- 事業承継・M&Aを円滑に進め、後継者不在などの課題を解決すること
- 承継後の生産性向上を支援し、地域経済の活性化を促すこと
- M&Aや事業再編を通じて、経営資源の引継ぎ・統合を促進すること
第2章:4つの枠の概要解説
事業承継・M&A補助金は、目的や企業の状況に応じて4つの枠が設けられています。各枠の概要は次のとおりです。
2-1. 事業承継促進枠
- 対象:親族内承継や従業員承継(役員・従業員)を進める企業
- 内容:設備投資や体制整備を補助
- 条件:認定経営革新等支援機関と承継計画を作成すること
すでに後継者が決まっており、承継を成長のきっかけにしたい企業に最適。主に、承継者・承継予定者が引き継ぐ経営資源の活用に必要な設備投資等が補助対象です。
2-2. 専門家活用枠
- 対象:M&Aによる承継を検討している企業(買い手・売り手の双方)
- 内容:仲介、FA(ファイナンシャルアドバイザー)、デュー・ディリジェンス(DD)費用などを補助
- 特徴:「100億企業特例」で補助上限額が最大2,000万円に拡大
M&Aの推進には専門家支援が不可欠。特に買い手側はDD(企業調査)が必須で、その費用も補助対象となります。主に外注費・委託費など専門家への支払いが対象です。
※DD(デュー・ディリジェンス)とは:
買い手が実施する「企業の健康診断」に相当する調査。財務・法務・労務などを専門家が精査し、買収後のリスクを未然に防ぎます。
2-3. 廃業・再チャレンジ枠
- 対象:M&Aを試みたが不成立となり、廃業しつつ事業再挑戦(個人での新たな活動や新法人設立など)を目指す企業
- 内容:在庫処分、解体、原状回復、リース解約など廃業関連費用を補助
- 特徴:単独申請または他枠との併用が可能
廃業コストを軽減し、経営者の新たな挑戦を後押しする枠です。廃業や清算に伴う費用が補助対象となります。
2-4. PMI推進枠
- 対象:M&Aを成立させた、または成立間近の企業
- 内容:PMI(経営統合)に必要な専門家費用や設備投資を補助
- 類型:専門家活用類型/事業統合投資類型
PMI(Post Merger Integration)はM&Aの成否を左右する重要プロセスで、統合効果の最大化を支援。主にPMIに伴う専門家費・設備費・システム統合費用などが対象。
※PMI(Post Merger Integration)とは:
M&A成立後に行う「経営の統合作業」。人事制度や会計システム、販売網などを一体化させ、2社が一つの企業として機能するよう整える取り組みです。
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第3章:補助対象経費と補助率・上限額

本補助金の大きな特徴は、設備投資が必須ではない点にあります。ものづくり補助金や省力化補助金のように「新しい設備導入」が前提ではなく、事業承継やM&Aに伴う幅広い経費が対象です。承継後の生産性向上や統合の実現に必要であれば、設備投資に限らず柔軟に活用できます。
枠 | 補助上限額 | 補助率 | 主な対象経費 |
---|---|---|---|
事業承継促進枠 | 800~1,000万円(+150万円加算あり) | 1/2〜2/3 | 設備投資、システム導入、専門家費用、販路開拓関連費用 など |
専門家活用枠 | 600万円(特例2,000万円) (+150万円/+200万円加算あり) | 1/2〜2/3 | 仲介手数料、FA費用、デュー・ディリジェンス費用、契約関連の専門家報酬 など |
廃業・再チャレンジ枠 | 150万円 | 1/3〜2/3 | 在庫処分、解体費、原状回復費、リース解約費用、廃業に伴う専門家費用 など |
PMI推進枠 | 150~1,000万円(+150万円加算あり) | 1/2〜2/3 | PMI専門家費用(会計・人事・法務等)、統合に伴う設備投資、システム統合費用 など |
加算措置
- 廃業費用加算:+150万円
M&Aを試みたが成立しなかった場合、廃業に伴う在庫処分・解体・原状回復などのコストについて、補助上限額に最大150万円が加算されます。 - デュー・ディリジェンス費用加算:+200万円
買い手支援類型では、DD(財務・法務・労務などの調査)の実施が必須とされており、その費用について通常の補助上限に加えて200万円が上乗せされます。
対象外経費
- 株式や事業の買収額そのもの
「M&A補助金」と聞くと、企業や事業の買収対価そのものに補助金が出ると誤解されがちですが、本補助金は買収資金を直接支援するものではありません。対象となるのは、承継やM&Aの実施に伴って発生する周辺費用(専門家への支払い、統合のための設備投資、廃業費用など)であり、株式譲渡代金や事業譲渡代金といった対価そのものは補助対象外です。
特徴まとめ
- 設備投資が必須ではない:承継やM&Aの円滑化に必要であれば、専門家費用や廃業費用も対象。
- 柔軟な経費対応:事業承継計画やM&Aプロセスに即した支出を幅広くカバー。
- 他補助金との差別化:ものづくり補助金・省力化補助金のような「必ず設備投資が必要」という条件なし。
- 一方で買収対価は対象外:株式・事業の買収額は補助されない。
第4章:申請時の注意点と相談先
【認定経営革新等支援機関による計画確認(事業承継促進枠のみ)】
- 確認の必須性:事業承継促進枠では、事業承継の蓋然性が高いことについて認定経営革新等支援機関の確認が必須。
- 確認書の取得時期:公募申請前に事業承継計画に対する確認書を発行してもらう必要があり、確認書なしでは申請不可。
- 確認される内容:
- 承継者・承継形態の要件を満たしているか(実質的な事業承継の計画性)
- 公募申請期日から5年間の事業承継対象期間内に承継完了が見込めるか
- 承継で引き継ぐ経営資源を活用し、生産性向上に資する設備投資等に取り組む計画か
- 承継未完了時の取扱い:対象期間内に承継が完了しなかった場合、交付された補助金の返還が必要。
【その他の注意点】
- M&A支援機関登録制度の留意:専門家活用枠で仲介やFA費用の補助を受ける場合は、M&A支援機関登録制度に登録された専門家への依頼が必須。交付決定日前の契約は対象外になるため、契約タイミングに注意。
【主な相談先】
- 認定経営革新等支援機関
- 中小企業基盤整備機構(事業承継・引継ぎ支援センター)
- 商工会議所・商工会
第5章:まとめ
事業承継・M&A補助金は、承継前から承継後、さらには廃業や再挑戦まで、幅広い局面をカバーする制度です。以下のような企業に適しています。
- 後継者が決まり、設備投資を進めたい企業
- M&Aを検討し、専門家の支援を必要とする企業
- M&Aが不成立で廃業を決断するが、新たな挑戦を視野に入れる経営者
- M&A成立後に統合作業を進め、生産性を高めたい企業
承継やM&Aは一度きりの重要な意思決定です。早めに専門家へ相談し、計画的に進めることが採択と成功への近道となります。
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早稲田大学卒業後、大手総合商社に勤務し、
企業成長と多様な働き方の両立を支援する株式会社WellFlagsを設立
ものづくり補助金やIT補助金等の補助金申請代行の専門家として、各種補助金のコンサルタント、申請代行を実施
高い採択率を誇る補助金申請プロサポートの代表コンサルタントとしても活動中