デジタル化・AI導入補助金はどんな業種に使える? 業種別の活用パターン5選

デジタル化・AI導入補助金はどんな業種で使える? 業種別の活用パターン5選 具体例付きでわかりやすく解説!

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、ITツールの導入費用の一部を補助し、業務効率化と生産性向上を後押しする制度です。本記事では、建設・製造・サービス・飲食・医療の5業種について、業種別の活用パターンを紹介します。事例は、当社が申請を支援したものです。

読み終えると、自社の業種でどのようなITツールに使えるのか、申請する前に何を確かめておくべきかが分かります。

はじめに:デジタル化・AI導入補助金とは?

デジタル化・AI導入補助金は、2025年度まで「IT導入補助金」の名称で実施されていた制度です。働き方改革や賃上げ、インボイスの導入など、相次ぐ制度変更への対応を後押しすることが目的です。

対象は、中小企業・小規模事業者であれば、ほぼすべての業種の事業者です。会社のほか、個人事業主や医療法人なども申請できます。会計や勤怠管理のソフトに加えて、施工管理や生産管理など業種ごとの業務ソフトも対象で、AIを搭載したものも含まれます。

※業種ごとに資本金や従業員数の基準があり、宗教法人や法人格のない任意団体、大企業の出資を一定以上受けている会社などは対象外です。詳細は、事務局の資料ダウンロードページにある公募要領をご確認ください。

主な枠は「通常枠」と「インボイス枠」の2つです。通常枠は、業務の効率化に役立つソフトが対象です。インボイス枠は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した会計・受発注・決済のソフトが対象で、PCやレジなどもあわせて申請できます。

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補助額と補助率の詳しい内容は、下表のとおりです。

区分補助額補助率
通常枠(1プロセス以上)※1 5万円〜150万円未満1/2以内 ※2 
通常枠(4プロセス以上)※1 150万円〜450万円以下1/2以内 ※2 
インボイス枠:会計・受発注・決済のソフト〜350万円2/3〜4/5以内 ※3 
インボイス枠:PC・タブレット等〜10万円1/2以内
インボイス枠:レジ・券売機〜20万円1/2以内

※1 プロセスとは、ITツールで効率化する業務の種類のことです。

※2 通常枠は、地域別最低賃金に近い水準で雇っている従業員が一定の割合を超えるなどの条件を満たすと、補助率が2/3以内になります。

※3 インボイス枠のソフトの補助率は、補助額50万円以下の部分が3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円を超える部分が2/3以内です。

このほかに、セキュリティ対策推進枠などの枠もあります。また、本記事で「インボイス枠」と書くときは、インボイス枠のうち「インボイス対応類型」を指します。

あわせて読みたい:【2026年度最新】「デジタル化・AI導入補助金」とは?IT導入補助金からの変更点と制度概要をわかりやすく解説

業種を問わず使えるITツール|会計・勤怠・OCR・チャットボットなど

会計や勤怠管理など、どの業種でも行う業務のソフトは、業種を問わず補助の対象になります。代表的なツールと、導入して減らせる作業は下表のとおりです。

ITツール主な機能減らせる作業
会計ソフト仕訳・決算書の作成手作業での帳簿付け
勤怠・給与管理出退勤の記録・給与計算タイムカードの集計
受発注・請求見積書・請求書の発行請求書の手作成
顧客管理・予約管理顧客情報や予約の一元管理顧客名簿や予約台帳の手作業
在庫管理入出庫・棚卸の管理在庫の数え直しや転記
OCR・RPA・チャットボット※書類の読み取り、定型作業の自動化、問い合わせへの自動応答書類の手入力、くり返し作業、同じ質問への対応

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)14・15・37〜40頁

※OCR・RPA・チャットボットなどの汎用ツールは、通常枠では単独で申請できません。会計や受発注などの業務ソフトと組み合わせると、申請できるようになります。

また、導入したいツールがAIを搭載しているかどうかは、事務局サイトの「ITツール検索」で確かめられます。

次に、業種ごとに、どのようなITツールを導入できるか、その具体例を紹介します。

業種別の活用パターン5選|業種ごとの活用例と当社の支援事例

業種ごとの業務に特化したITツールも、補助の対象です。ここでは建設・製造・サービス・飲食・医療の5業種について、主な活用例と、当社が申請を支援した事例を順に紹介します。

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※事例は、申請時の計画にもとづく内容です。社名と地域は伏せています。

①建設業|施工管理や業務管理のソフトで事務作業を減らす

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建設業での主な活用例

建設業では、次のようなITツールが補助の対象になります。

  • 施工管理(日報・原価管理・作業員の手配)
  • 工程表・写真管理・電子小黒板
  • 積算・見積
  • 安全書類(グリーンファイル)の作成・管理

建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。現場のあとに残る事務作業を減らすことは、規制への対応にもつながります。

当社の支援事例:電気工事会社

この会社では、出退勤・日報・請求の管理を、紙と表計算ソフトで別々に行っていました。現場作業のあとの日報提出や請求処理が負担になり、残業が続いていたことが課題でした。そこで、建設業向けの業務管理ソフトでこれらの情報をクラウド上にまとめる計画を立て、申請しました。

項目内容
業種建設業(電気工事業)
申請枠通常枠
導入するツール出退勤・日報・請求を一元管理する、建設業向けのクラウド型業務管理ソフト
期待する効果転記ミスと残業の削減

②製造業|生産・原価の管理システムで数字を一元管理

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製造業での主な活用例
製造業では、次のようなITツールが補助の対象になります。

  • 生産管理(生産計画・工程計画)
  • 原価計算・部品表(BOM)
  • 品質管理・トレーサビリティ
  • CAD・CAM

製造業では、紙や表計算、職人の経験に頼った管理が残っている会社も少なくありません。数字を一元管理すると、原価の把握や在庫の見直しがしやすくなります。

当社の支援事例:伝統工芸品メーカー

この会社では、売上・売上原価・在庫の管理が、既存のソフトと表計算ソフトに分かれていました。既存のソフトは更新が止まっており、入力も営業担当ごとに行うため、作業が特定の担当者に頼りがちでした。そこで、売上原価管理システムを導入し、これらの情報をクラウド上で一元管理する計画で申請しました。

項目内容
業種製造業(伝統工芸品)
申請枠通常枠
導入するツール売上原価管理システム
期待する効果入力作業の削減と原価の把握

③サービス業|予約・見積・請求の管理をデジタル化

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サービス業での主な活用例

サービス業では、次のようなITツールが補助の対象になります。

  • 予約管理(予約受付台帳)
  • 顧客管理(CRM)
  • 宿泊施設のサイトコントローラー
  • シフト・勤怠管理

受発注や請求のツールは、インボイス制度への対応も兼ねられます。会計・受発注・決済の機能を持つソフトであれば、通常枠より補助率の高いインボイス枠で申請できる場合があります。

当社の支援事例:結婚式場・宴会場の運営会社

この会社では、見積・受発注・請求の業務を、紙や表計算ソフトで管理していました。インボイス制度への正確な対応と、増え続ける事務作業が課題でした。そこで、見積から請求までを管理するツールを導入し、適格請求書の管理や税率ごとの計算を自動化する計画で申請しました。

項目内容
業種生活関連サービス業(結婚式場)
申請枠インボイス枠
導入するツール見積・受発注・請求の管理ツール
期待する効果請求事務の正確さの向上

④飲食業|券売機やセルフオーダーで注文と会計を自動化

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飲食業での主な活用例

飲食業では、次のようなITツールが補助の対象になります。

  • セルフオーダー・オーダーエントリー
  • POSレジ・券売機のシステム
  • レシピ・食材在庫の管理
  • シフト・勤怠管理

券売機やレジ本体は、インボイス枠で会計・受発注・決済のソフトとあわせて導入する場合に限り、補助の対象になります。補助額は20万円まで、補助率は1/2以内です。

当社の支援事例:ラーメン店

この店では、券売機がなく、注文と会計を店員が受け持っていました。会計に人手がかかるうえ、インボイス制度への対応も課題でした。そこで、電子決済と新紙幣に対応した券売機を導入し、注文と会計を自動化して会計データを一元管理する計画で申請しました。

項目内容
業種飲食業(ラーメン店)
申請枠インボイス枠
導入するツール券売機
期待する効果会計待ちの解消

⑤医療|予約・問診のシステムで受付と待ち時間を減らす

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医療機関での主な活用例
医療機関では、次のようなITツールが補助の対象になります。

  • 電子カルテ(診療管理)
  • オンライン診療システム
  • 医療画像の管理・閲覧
  • 健康診断などの検査結果の管理

医療法人は、常時使用する従業員が300人以下であれば対象です。予約や問診をデジタル化すると、スタッフの手間と患者の待ち時間を同時に減らせます。

当社の支援事例:皮膚科の診療所

この診療所では、2院目の開院にあたり、紙の問診票の扱いが課題でした。患者が記入した内容を既存のシステムへ手入力する必要があり、紙の保管にも手間がかかっていました。そこで、予約・問診のシステムを導入し、受付から問診までをアプリで完結させる計画で申請しました。

項目内容
業種医療(皮膚科の診療所)
申請枠通常枠
導入するツール予約・問診システム
期待する効果手入力の削減と待ち時間の短縮

ITツールではなく、設備やロボットの導入を考えている場合は、省力化補助金(一般型)も選択肢になります。

あわせて読みたい:省力化補助金(一般型)はどんな業種で使える?業種別の活用例と申請ポイントをわかりやすく解説

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申請する前に知っておきたい4つのこと

デジタル化・AI導入補助金を申請する前に、次の4つを押さえておくとよいでしょう。申請から補助金の受け取りまでの流れは、下の図のとおりです。

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①IT導入支援事業者と一緒に申請する

補助の対象は、IT導入支援事業者が事務局にあらかじめ登録したITツールに限られます。IT導入支援事業者とは、ITツールを提供し、導入や申請を支援する事業者として事務局に登録された事業者のことです。

申請も、申請者とIT導入支援事業者が共同で行います。まずは、導入したいツールを扱うIT導入支援事業者に相談するところから始めます。

②交付決定の前に契約・購入したものは対象外

交付決定とは、事務局が補助金を出すことを正式に決めることです。交付決定の前にITツールを契約・発注したり、代金を支払ったりした場合は、補助を受けられません。

また、リース・レンタル契約のITツールや、中古品も対象外です。

③労働生産性の向上や賃上げなどの要件がある

申請には、国の補助金申請などに使う共通アカウント「gBizIDプライム」の取得が必要です。発行までおおむね2週間かかるため、早めに手続きをしておくとよいでしょう。

あわせて、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」の宣言も必要です。これは、情報セキュリティ対策に取り組むことを自ら宣言する制度です。

また、通常枠では、労働生産性を高める3年間の事業計画を立てることも求められます。枠や申請額などによっては、賃上げの計画も必要です。

④補助金を受け取ったあとも効果報告がある

補助金を受け取ったあとは、事務局への「効果報告」があります。通常枠では、③で立てた事業計画の3年間、毎年、営業利益や人件費、給与支給総額などの数値と、ITツールを使い続けていることが分かる書類を提出します。一方、インボイス枠では、報告する内容と時期が通常枠と異なります。報告するのは、インボイス制度への対応状況と、ITツールを使い続けていることが分かる書類です。報告の時期は、ITツールの導入後と、交付申請をした翌事業年度(1年度目)、その2年後の事業年度(3年度目)の3回で、通常枠と違って2年度目の報告は必要ありません。なお、賃上げが必須となる申請や、賃上げで加点を受けた場合は、3年間の事業計画期間が終わったあとに、賃上げの実施状況もあわせて報告します。

途中でITツールを解約したり、事業をやめたりした場合は、辞退の手続きが必要になり、補助金の返還を求められることがあります。また、賃上げが必須となる申請では、期間内に効果報告をしなかった場合や、賃上げの要件を満たせなかった場合に、補助金の返還を求められます。

事業計画や賃上げの計画の細かな条件は、枠や申請額などによって異なります。詳しくは公募要領をご確認いただくか、お気軽に当社へご相談ください。

よくある質問

Q. 個人事業主でも使えますか?

はい、使えます。中小企業・小規模事業者の定義には、個人事業主も含まれています。日本国内で事業を営んでいることなど、申請の要件を満たせば申請できます。

Q. パソコンやレジだけを買う費用も補助されますか?

ハードウェアだけの購入は、対象外です。インボイス枠で、会計・受発注・決済のソフトとあわせて導入する場合に限り、補助の対象になります。通常枠では、ハードウェアは対象になりません。

Q. 自社に合うITツールはどう探せばよいですか?
事務局サイトの「ITツール検索」で、補助の対象として登録されたツールを探せます。AI機能の有無なども、ここで確かめられます。迷ったときは、お気軽に当社へご相談ください(初回相談は無料です)。

まとめ:自社の業種に合ったITツールで業務の効率化を進めよう

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者であれば業種を問わず使える補助金です。会計や勤怠などの共通のツールに加え、建設業の施工管理や飲食業の券売機など、業種ごとの業務に合ったツールも対象になります。

申請はIT導入支援事業者と共同で行い、契約や購入は交付決定のあとに進める必要があります。要件は枠や申請額によって変わるため、自社のケースで使えるかを専門家に相談することも大切です。

当社が運営する「補助金申請プロサポート」では、初回相談を無料で受け付けています。迷ったときは、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
奥山 大地

奥山 大地おくやま だいち

中小企業診断士/株式会社WellFlags 代表取締役

早稲田大学卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。アジア各国での海外勤務を通じて、中小企業の販路開拓や事業支援に携わる。その後、中小企業診断士となり、株式会社WellFlagsを設立。

これまで700社以上の補助金相談に対応し、経済産業省系や自治体の補助金の申請支援から、事業計画書の作成、採択後のフォローまで支援している。補助金の審査員を務めた経験もあり、審査の視点を踏まえて、制度を事業の成長につなげる提案を行っている。

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