建設業が経営革新計画を活用するなら?申請のポイントと使えるシーン

建設業が経営革新計画を活用するなら?申請のポイントと使えるシーン

はじめに

建設業界は現在、慢性的な人材不足や就業者の高齢化、2024年問題など、さまざまな課題に直面しています。そのような状況を乗り切る手段として、新しい技術の導入や新事業活動に取り組むことは、重要な選択肢の一つです。

しかし、新事業を始めるには設備投資や人材確保、販路開拓などに費用がかかるため、資金面の課題から着手できないケースも少なくありません。

そこで活用を検討したいのが「経営革新計画」です。経営革新計画の承認を受けると、保証・融資の優遇措置など各種支援策の対象となる場合があり、新事業に必要な資金調達の選択肢を広げやすくなります。

今回の記事では、建設業の方向けに、経営革新計画を活用するメリットや申請時のポイント、具体的に活用しやすいシーンについて解説します。


① 経営革新計画とは

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経営革新計画とは、企業の課題解決や経営の向上を目的として、新事業活動の内容や経営目標を盛り込んだ計画書です。中小企業等経営強化法に基づき、計画書を作成して承認を受けることで、金融支援や販路開拓支援などの各種支援策に申請できるようになります。

新事業活動の定義

経営革新計画における新事業活動は、以下の5類型のいずれかに相当することが求められます。

類型取り組み例
新商品開発又は生産産業廃棄物や建設副産物などを活用し、肥料や環境配慮型の建材などを新たに開発・販売する
新役務開発又は提供土木・建築の技術や建設機械を活かし、草刈り、清掃、改修、剪定などを請け負う地域密着型の生活支援サービスを新たに提供する
商品の新たな生産又は販売の方式の導入調湿性や健康面に配慮した内装材、低アレルギー住宅などを開発し、従来の施工請負だけでなく、Webサイトを活用して新たな顧客層へ提案・販売する
役務の新たな提供の方法の導入3DソフトやITツールを活用し、工事の完成イメージを事前に提示したうえで、設計から施工までを一体的に提案するサービスを提供する
技術に関する研究開発及びその成果の利用、その他新たな事業活動コンクリート再生砂に含まれる有害物質を除去する技術や、漆喰など既存建材の弱点を補う独自技術を開発し、環境配慮型・高付加価値型の施工に展開する。

※上記はあくまで一例です。実際の取組みがどの類型に該当するかは、事業内容によって異なり、複数の類型にまたがる場合もあります。また、同じような取組であっても、必ず承認されるとは限りません。

承認までの流れ

経営革新計画による優遇措置を受けるためには、都道府県(申請者の構成によっては国)からの承認を受ける必要があります。

基本的な流れは以下のとおりです。

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承認機関に加え、県内の中小企業支援センター、商工会、商工会議所などで書類作成や計画の立て方についてアドバイスを受けることも可能です。

経営革新計画の概要や申請の流れ、注意点については以下の記事で詳しくご紹介しています。

関連記事:経営革新計画とは?中小企業が知っておきたい活用のポイント


② 実際の建設業事例

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建設業においても、革新的な技術の開発やサービスの提供を目指す企業が、経営革新計画の承認を受けたケースが多くあります。実際の事例を以下にご紹介します。

株式会社ZEN住研(茨城県)

株式会社ZEN住研は、茨城県の住宅建築・リフォーム業の会社です。自然素材や人にやさしい建材を使った住宅の新築・増改築工事、外壁塗装、店舗設計などを手がけていました。

しかし、新築需要の減少や価格競争の激化により、競合他社との差別化が課題となっていました。

そこで経営革新計画を作成し、政府系金融機関による低金利融資制度も活用しながら、省エネリノベーションや耐震補強を施したモデルハウスを整備し、省エネ効果を「見える化」して提案する取組みを進めました。

その結果、高水準の省エネ住宅への関心が高まり、新築の注文増加につながりました。

出典:茨城県産業戦略部中小企業課 経営革新計画事例集

株式会社松本測量(千葉県)

株式会社松本測量は、千葉県の建築測量業の会社です。物流倉庫のロボット化が進むなか、床面のわずかな傾きや凹凸を高精度に測定するニーズが高まっていました。

一方で、人手による実測では工期や正確性、データの見やすさに課題がありました。そこで同社は経営革新計画を作成し、3Dレーザースキャナーと解析ソフトを活用した新測量システムを開発。ものづくり補助金も活用しながら、点群データを見える化・数値化する仕組みを構築しました。

その結果、業務効率化や納期短縮、コスト低減を実現し、付加価値額は申請時と比較して75.6%増加しました。

出典:千葉県商工労働部経営支援課 経営革新計画承認企業事例集2024

有限会社峰建設(大分県)

有限会社峰建設は、大分県の建設業の会社です。建築工事や土木工事、浚渫工事などを手がけていましたが、他社との差別化や競争力の強化が課題となっていました。

そこで経営革新計画を作成し、河川やため池などの底泥浚渫工事分野への進出を計画しました。特殊な地形での作業に対応するため、県内では珍しい専用設備を導入し、底泥浚渫工事の積極的な受注を目指しました。

専門人材と専用設備を活かした新たな工法により、環境美化対策や災害対策、国土強靭化への貢献を図っています。

出典:大分県商工観光労働部経営創造・金融課 大分県知事承認 中小企業経営革新計画事例集 


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③ 建設業ならではの「革新性」の見せ方

先述の通り、経営革新計画の承認を受けるには、「革新性」が認められることが重要です。既存事業の拡充にとどまる取組みはもちろん、新しい設備やITツールを導入する場合でも、それだけで新事業活動と見なされるとは限りません。

ここでは、建設業が経営革新計画を立てる際に重要となる「革新性」の見せ方と、陥りやすい失敗について解説します。

「従来と何が違うか」を数値・比較で明示する重要性

経営革新計画では、新しい試みがどのような価値を生み出すかを具体的に示すことが重要です。単に「省エネにつながる」「作業効率が上がる」と説明するのではなく、数値や既存事業との比較を明示することで、計画に説得力を持たせることができます。

たとえば、以下のように効果を整理するとよいでしょう。

・既存設備と比べて消費電力を60%削減
・従来の作業方法よりも工期を30%短縮
・人手で行っていた測量作業を自動化し、作業時間を大幅に削減

このように具体性を持たせることで、新事業活動の内容や効果を伝えやすくなります。ただし、数値目標や新事業の内容は、根拠のある実現可能なものであることが重要です。

建設業で一般的なやり方との違いを示す

経営革新計画で「革新性」を示すためには、建設業で従来行われてきた方法と、新たな取組みの違いを分かりやすく説明することが重要です。

たとえば、以下のように整理すると、従来との違いが伝わりやすくなります。

・従来は人力で運んでいた資材を専用機械で搬送し、業務効率化と事故リスクの低減につなげる
・人手による実測から3Dレーザースキャンに切り替え、測量精度の向上や作業時間の短縮を図る
・紙や口頭で行っていた施工状況の共有をITツールで可視化し、顧客への説明品質を高める

このように、自社や業界の現状、従来の方法における課題を示したうえで、その解決策として新事業を打ち出すことで、計画の必要性や革新性を伝えやすくなります。

同業他社との差別化ポイントの整理方法

自社にとって新しい試みであっても、同業他社に相当程度普及しているものは、新事業活動として評価されにくい場合があります。

たとえば、近年の建設業ではDX化が進んでおり、ドローンや3D CAD、施工管理アプリなどのITツールを導入する企業も増えています。

そのため、単に新しいツールを導入するだけでは、計画に十分な説得力を持たせることはできません。

同じような設備や技術を活用する場合でも、「他社と何が違うのか」「導入によって新たにどのような価値を提供できるのか」を明確にする必要があります。

・設備の導入による業務効率化にとどまらず、新たな商品の販売を開始する
・県内にはない特殊な専用設備を導入し、環境負荷の削減や災害対策につなげる
・ITツールを活用して施工状況や測定結果を可視化し、顧客への説明品質を高める

このように、「技術を導入する」だけではなく「導入することで他社にはない新たな価値を創出する」、「同業他社が導入していない設備である」といった独自性・新規性を主張することが重要です。


④承認後のメリット

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経営革新計画の承認を受けることで、補助金申請時の加点や金融支援、信用保証の特例など、さまざまな支援措置の対象となる場合があります。また、計画内容を整理することで、金融機関や取引先に新事業の内容を説明する資料としても活用できます。

ここでは、経営革新計画の主なメリットについてご紹介します。

補助金申請時の加点

経営革新計画の承認を受けると、一部の補助金で加点対象となる場合があります。

代表的な例として、ものづくり補助金が挙げられます。ものづくり補助金は、革新的な製品・サービスの開発や、省力化に向けた設備投資などを支援する制度です。建設業でも、新工法の開発や施工管理の高度化などに活用できる場合があります。

また、事業承継やM&Aに伴う設備投資などを支援する事業承継・M&A補助金でも、経営革新計画の承認が加点対象となる場合があります。

そのほか、都道府県が実施する補助金・支援制度でも、経営革新計画の承認が加点や申請要件として扱われるケースがあります。ただし、対象となるかどうかは補助金ごと、年度ごとに異なるため、申請時には最新の公募要領を確認しましょう。

政府系金融機関の低利融資・信用保証の優遇

経営革新計画の承認を受けると、政府系金融機関による低利融資や、信用保証の特例を利用できる場合があります。たとえば信用保証の特例では、通常の保証枠とは別に、普通保証で最大2億円の別枠保証の対象となりえます。

建設業では、新工法の開発や省力化設備の導入、専用設備の購入などでまとまった資金が必要になるケースも少なくありません。経営革新計画の承認を受けることで、資金調達の選択肢を広げられる可能性があります。

ただし、これらの制度を利用するには、各金融機関や信用保証協会による審査が必要です。経営革新計画の承認を受けただけで、融資や保証を必ず利用できるわけではありません。

取引先や金融機関に新事業の内容を説明しやすくなる

経営革新計画は、取引先や金融機関に新事業の内容を説明する資料としても活用できます。特に建設業は、設備や工法、施工体制など専門的な内容が多く、新事業の強みや将来性を伝えるのが難しい場合があります。

経営革新計画を作成することで、たとえば「小型ICT建機の導入により、狭小地や住宅地での造成工事に対応し、3年後に売上10%増を目指す」など、具体的な効果を示すことで、金融機関や取引先にも新事業の内容を説明しやすくなります。

そのため、金融機関への融資相談や、取引先への提案時にも事業の方向性を理解してもらいやすくなるでしょう。


⑤経営革新計画の数値目標とは

経営革新計画の承認を受けるためには、数値目標を定められた水準以上に設定する必要があります。

「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率「給与支給総額」の伸び率
事業期間が3年の場合9%以上4.5%以上
事業期間が4年の場合12%以上6%以上
事業期間が5年の場合15%以上7.5%以上

それぞれの項目について以下に詳しくご紹介します。

計画期間

経営革新計画の事業期間は3〜5年で設定します。建設業では、設備導入や新工法の開発から実際の受注・施工・売上計上までに時間がかかる場合があるため、計画期間内に成果が数値として表れるかを慎重に見極めることが重要です。

特に、大型案件や公共工事に依存している場合は、年度ごとの売上変動も大きくなりやすいため、直近決算の状況や受注見込み、施工時期を踏まえて、実現可能な数値目標を設定する必要があります。

付加価値額・一人当たり付加価値額

付加価値額は、営業利益・人件費・減価償却費を足し合わせて算出します。その数値を従業員数で割ることで、一人当たり付加価値額を求めることができます。

建設業では、重機や測量機器、専用設備など大規模な設備投資を行うケースもあり、減価償却費が大きくなる場合があります。そのため、設備投資が付加価値額の伸びに一定程度影響することもあります。

とはいえ、減価償却費は複数年に分けて計上されるものであり、設備導入によって営業利益が伸びなければ、計画全体の説得力は弱くなります。減価償却費ありきで目標値を設定するのではなく、その設備投資によってどのような価値を創出できるのかを明確にすることが重要です。

給与支給総額

給与支給総額とは、役員報酬、給料、賃金、賞与、各種手当などを合計した金額です。

社員だけでなく、現場作業員や日雇い労働者、パート・アルバイトなどへの賃金も含まれます。一方で、外注費や福利厚生費、退職金などは給与支給総額に含まれません。

特に注意したいのが、一人親方の扱いです。一人親方への支払いは、通常は外注費として扱われるため、給与支給総額には含まれません。ただし、実態として雇用に近い働き方をしている場合は扱いが変わる可能性があるため、会計処理や契約内容を確認することが重要です。



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⑥数値目標を設定する際のポイント

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数値目標は、単に基準を満たす水準に設定すればよいわけではありません。妥当性や実現可能性の乏しい数値では、計画全体の説得力が弱くなり、承認を受けにくくなる場合があります。

特に建設業は、案件規模や受注時期によって売上・利益が変動しやすい業種です。数値目標を設定する際は、業種特有の事情を踏まえたうえで、根拠のある計画にする必要があります。

基準となる数値に注意する

経営革新計画の数値目標は、原則として申請時点の最新の決算数値を基準に設定します。そのため、前年度に大規模な工事を受注し、売上や利益が一時的に大きく伸びている場合は、計画期間中に必要な伸び率を達成しにくくなることがあります。

特に建設業は、案件規模や受注時期によって年度ごとの業績が大きく変動しやすい業種です。直近決算の数値が一時的な好不調の影響を受けている場合は、その背景を整理したうえで、申請時期や計画内容を慎重に検討することが重要です。

数値目標の根拠を示す

数値目標を設定する際は、その根拠もあわせて整理することが重要です。単に「売上を10%増やす」「利益率を改善する」と書くだけでは、なぜその数字を達成できるのかが伝わらないためです。

たとえば、以下のように数値の根拠を具体的に示すとよいでしょう。

・アームロール車の導入により、解体工事で発生する廃材の収集・運搬まで自社で対応し、外注費の削減と受注単価の向上を目指す
・3D測量システムの導入により、現地測量や図面作成にかかる作業時間を30%削減し、人件費の圧縮と事故リスクの低減につなげる
・BIM対応ソフトの導入により、設計段階で施工イメージや干渉箇所を確認し、手戻りの削減と高付加価値な設計提案につなげる

このように、受注件数の増加、工期短縮、外注費の削減、単価向上など、新事業によって解決できる課題と、売上や利益につながる理由を具体的に説明できるようにしておきましょう。

売上変動を踏まえて数値目標を設定する

建設業では、公共工事の発注時期や大型案件の有無、天候・季節の影響などにより、年度ごとの売上や利益が大きく変動することがあります。

そのため、数値目標を設定する際は、直近の決算数値だけでなく、過去の受注実績や今後の見込み、施工時期なども踏まえて根拠を整理することが重要です。

また、大型案件を計画に含める場合は、その案件の確度や売上計上の時期を明確にする必要があります。特定の案件だけに頼った計画に見えないよう、新事業による継続的な受注や新規工種への展開の可能性もあわせて示すとよいでしょう。


まとめ

建設業の方向けに、経営革新計画の基礎知識と申請時の注意点についてご紹介しました。経営革新計画では、革新性の示し方や数値目標の設定、設備投資による効果の説明など、整理すべきポイントが多くあります。

申請を検討する際は、都道府県の担当部局などの承認機関に要件や手続きを確認することが重要です。また、県内の中小企業支援センター、商工会、商工会議所などでも相談できます。

一方で、建設業の新事業は、重機やICT施工、施工管理システムなど、専門的な設備投資を伴うケースも少なくありません。「どの制度を活用できるのか」「投資内容をどのように事業計画へ落とし込むのか」で迷う場合は、補助金申請プロサポートにご相談ください。

建設業の設備投資や業務フローを踏まえながら、事業計画の整理から申請手続き、承認後の補助金活用までサポートします。

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それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!