廃業・再チャレンジ枠は、後継者が見つからない、あるいはM&Aの相手が決まらないといった事情で事業をたたむ中小企業に対し、廃業にかかる費用と、その後の再チャレンジを支える補助金です。事業承継・M&A補助金のなかの一つの枠で、在庫の処分や設備の解体、原状回復といった廃業の実費を補助対象にできます。ただし、この枠は単に事業をやめるだけでは対象になりません。廃業したうえで、新しい会社を立ち上げる、個人事業で新たに動き出す、培った経験を活かせる場で再び働くといった次の挑戦に取り組むことが前提です。この記事では、対象になる人、再チャレンジとして認められる取り組み、補助額と対象経費、そして15次公募の要件までを、これから相談を考える事業者の目線で整理します。
この記事でわかること(目次)
- 廃業・再チャレンジ枠の全体像(補助額・補助率・対象経費)
- 再チャレンジとして認められる取り組みと、対象にならないケース
- 単独申請と併用申請の違い・単独申請の要件
- 15次公募のスケジュールと申請の流れ、よくある質問
基本情報:廃業・再チャレンジ枠の概要
| 項目 | 項目 |
|---|---|
| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(中小企業生産性革命推進事業) |
| 対象の枠 | 廃業・再チャレンジ枠 |
| 補助上限・下限 | 上限300万円/下限50万円(単独申請・併用申請とも共通) |
| 補助率 | 単独申請=補助対象経費の3分の2以内併用申請=主枠の補助率に準拠 |
| 対象者 | 事業承継・M&Aに伴い既存事業を廃業し、廃業後に再チャレンジする中小企業・小規模事業者・個人事業主 |
| 15次 申請受付 | 2026年6月19日〜7月24日 17:00(厳守) |
| 交付決定(採択) | 2026年9月下旬(予定) |
| 申請の前提 | GビズIDプライム/単独申請は認定経営革新等支援機関の確認が必要 |
補助率と補助額は、単独で申請するか、他の枠に上乗せして併用するかで扱いが変わります。詳しくは後半で解説します。
① 廃業・再チャレンジ枠とは(早わかり表)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| どんな制度か | M&Aで譲り渡せなかった等の事業者が、再チャレンジに取り組むために廃業する費用を補助する枠 |
| 対象になる人 | 廃業し、廃業後に再チャレンジする中小企業・小規模事業者・個人事業主 |
| 補助上限・下限 | 上限300万円/下限50万円 |
| 補助率 | 単独申請=2/3以内/併用申請=主枠の補助率に準拠 |
| 対象経費 | 廃業支援費/在庫廃棄費/解体費/原状回復費/リースの解約費/土壌汚染調査費/移転・移設費(併用のみ) |
| 申請形態 | 単独申請(再チャレンジ申請)/他の枠との併用申請 |
事業承継・M&A補助金は、世代交代やM&Aを後押しして中小企業の経営資源を次につなぐための補助金です。その一つである廃業・再チャレンジ枠は、事業の引き継ぎがうまくいかなかった場合でも、円滑に事業を整理し、経営者がもう一度挑戦できるようにするための枠と位置づけられています。廃業は後ろ向きな撤退ではなく、次の一歩に踏み出すための区切りとして捉える。この枠はそうした考え方に立っています。
参考:事業承継・M&A補助金の4つの枠(全体像)
事業承継・M&A補助金は、目的に応じて4つの枠に分かれています。廃業・再チャレンジ枠はその一つです。他の枠の補助上限・補助率もあわせて見ておくと、自社に合う枠や併用の可能性が見えてきます(金額・率は15次公募要領のものです)。
| 枠・類型 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 800万円(賃上げで1,000万円) | 2/3(小規模事業者等)/1/2(その他) |
| 専門家活用枠(買い手支援類型) | 600万円(DD実施で最大800万円) | 2/3 |
| 専門家活用枠(売り手支援類型) | 600万円 | 1/2(条件を満たせば2/3) |
| 専門家活用枠(小規模売り手支援類型・15次新設) | 450万円 | 2/3 |
| PMI推進枠(専門家活用類型) | 150万円 | 1/2 |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | 800万円(賃上げで1,000万円) | 2/3(小規模)/1/2(その他) |
| 廃業・再チャレンジ枠(本記事) | 300万円(下限50万円) | 単独2/3/併用は主枠に準拠 |
※DD費とは、M&Aで相手企業を調べるデュー・ディリジェンスの費用で、実施すると買い手支援類型の上限に200万円が上乗せされます。各枠には下限額や賃上げ要件などの条件があります。詳しくは各枠の公募要領をご確認ください。
② 再チャレンジとして認められる取り組みとは
この枠でもっとも誤解されやすいのが、再チャレンジの位置づけです。廃業の費用だけを補助してもらう制度ではありません。公募要領では、廃業後に地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たな活動に取り組むことが求められています。具体的には、次のような取り組みが再チャレンジに該当します。
| 再チャレンジに該当する取り組み | イメージ |
|---|---|
| 新たに法人を設立して事業活動を実施する | 別の業態や新しい分野で会社を立ち上げ直して再起する |
| 個人事業主として新たな事業活動を実施する | 法人をたたみ、個人事業として身軽に新しい事業を始める |
| 知識や経験を活かせる企業への就職、社会への貢献等 | 培った技術や人脈を活かして再び現場に立つ、地域に還元する |
一方で、公序良俗に反する事業や、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の各営業を含む社会通念上不適切な事業は、再チャレンジとして認められません。廃業後にどう動くのかを、申請の段階で計画として示す必要があります。

③ 対象になる人と、単独申請の要件
廃業・再チャレンジ枠には、廃業と再チャレンジそのものを申請する単独申請(再チャレンジ申請)と、他の枠に廃業費を上乗せして申請する併用申請の2つの形があります。まず違いを押さえましょう。
| 区分 | 単独申請(再チャレンジ申請) | 併用申請 |
|---|---|---|
| どんな時に使う | 廃業と再チャレンジ自体を主目的に申請する | 事業承継促進枠・専門家活用枠などに廃業費を上乗せする |
| 補助率 | 補助対象経費の2/3以内 | 併用する主枠の補助率に準拠 |
| 主な要件 | M&A着手の要件+廃業・再チャレンジ計画書+認定支援機関の確認 | 併用する主枠の要件に従う |
単独申請(再チャレンジ申請)で満たすべき主な要件
- 2020年以降に売り手としてM&Aへ着手し、申請締切の時点で3か月以上取り組んでいること
- M&A着手の証明として、次のいずれかを満たすこと:①事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、②M&A支援機関(仲介業者・地域金融機関等)との包括的な契約、③M&Aマッチングサイトへの登録
- 補助事業期間内に廃業を完了すること(法人は廃業登記の完了、個人事業は廃業届の提出と税務署の受理)
- 廃業・再チャレンジ計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること(計画書は書式の改変不可)
- GビズIDプライムのアカウントを取得していること(発行に1〜3週間かかるため早めの準備が必要)
- 法人の場合は、対象会社と支配株主(または株主の代表)による共同申請とすること
認定経営革新等支援機関とは、中小企業の経営支援に一定の専門性があると国が認定した支援機関のことです。税理士や公認会計士、金融機関、商工会議所などが認定されており、顧問税理士が該当することもあります。単独申請では、この機関に廃業・再チャレンジ計画書の内容を確認してもらう必要があります。
廃業・再チャレンジ計画書に書くおもな内容
- 廃業に至った事情(後継者不在、M&Aの不成立など)
- 廃業の手続きとスケジュール、かかる費用の見込み
- 廃業後に取り組む再チャレンジの内容(新法人の設立、個人事業での新事業、就職・社会貢献など)
計画書は所定の様式を使い、書式は改変できません。何をどこまで書くか迷いやすい部分なので、早めに支援機関や専門家に相談しながら進めると安心です。
併用申請のイメージ
併用申請は、事業承継促進枠や専門家活用枠などでM&A・事業承継を進める事業者が、その過程で生じる廃業の費用を、主となる枠に上乗せして申請する形です。たとえば、複数の事業のうち一部を譲渡し、残りを廃業するようなケースで使われます。この場合の補助率は、上乗せ先となる主枠の補助率に従います。

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④ いくら補助される?補助額と対象経費
補助額は、上限300万円・下限50万円です。単独申請の補助率は補助対象経費の3分の2以内なので、たとえば対象経費が300万円なら200万円が補助されます。注意したいのは下限で、交付申請時の補助対象経費が75万円未満(=補助額が50万円未満)になる申請は受け付けられません。また、実質的に同一の株主による複数申請は、合計で300万円が上限になります。
補助額の計算例(単独申請・補助率2/3の場合)
| 補助対象経費(税抜) | 補助額(2/3) | 判定 |
|---|---|---|
| 75万円 | 50万円 | 下限ちょうど。これ未満は受付不可 |
| 150万円 | 100万円 | 対象 |
| 300万円 | 200万円 | 対象 |
| 450万円以上 | 300万円 | 上限300万円で頭打ち |
補助対象経費が450万円を超えても、補助額は上限の300万円までです。逆に、補助額が50万円に満たない小さな申請はできません。
対象経費(廃業費)の7区分
| 経費区分 | 内容と注意点 |
|---|---|
| 廃業支援費 | 廃業登記の司法書士費用、清算等にかかる会計・税務の専門家費用(この区分は上限50万円) |
| 在庫廃棄費 | 商品在庫を専門業者に処分してもらう費用(売却して対価を得る処分は対象外) |
| 解体費 | 建物・設備等の解体にかかる費用 |
| 原状回復費 | 借りていた物件を返却する際の原状回復費用 |
| リースの解約費 | リース契約の解約金・違約金(リース資産の売買費用は対象外) |
| 土壌汚染調査費 | 土壌汚染の調査費用(汚染の対策工事費は対象外) |
| 移転・移設費 | 設備等の移転・移設費用(併用申請の場合のみ計上可) |
見積りにもルールがあります。1件(案件・発注)あたり50万円以上(税抜)の経費は、2者以上からの相見積を取り、最も安い提示者を選ぶのが原則です。50万円未満でも、1社からの見積書は必ず必要になります。

⑤ 15次公募のスケジュールと申請の流れ
| 段階 | 時期・内容 |
|---|---|
| 情報開示 | 2026年5月22日〜 |
| 申請受付 | 2026年6月19日〜7月24日 17:00(厳守) |
| 交付決定(採択) | 2026年9月下旬(予定) |
| 補助事業期間 | 交付決定からおおむね14か月程度 |
申請までの流れは、おおむね次のとおりです。単独申請では計画書の確認や証明の準備に時間がかかるため、締切から逆算して早めに動くことが大切です。
- GビズIDプライムのアカウントを取得する(1〜3週間)
- 単独申請の場合は、M&A着手を示す証明(相談・契約・登録のいずれか)を整える
- 廃業・再チャレンジ計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受ける
- 電子申請システムで申請する
- 交付決定(2026年9月下旬予定)を受ける
- 補助事業期間内に廃業を実行し、再チャレンジに着手する
- 実績報告を行い、補助金の交付を受ける(費用の支払い後に受け取る後払い)
補助金は後払いです。廃業や再チャレンジにかかる費用はいったん自社で立て替える必要があるため、資金繰りも見込んだうえで計画を立てましょう。
⑥ よくある活用ケースと注意点
活用のイメージ(2つのケース)
ケース1:地域で印刷業を営んでおり、主力の商業印刷は堅調だが、年賀状や名刺などの小口印刷部門は市場の縮小で長年赤字が続いていた。そこでWeb制作会社をM&Aで譲り受け、紙とWebを組み合わせた販促支援へ事業を広げることを決断。これを機に、自社の小口印刷部門を廃業した。旧式の印刷機の処分や作業場の原状回復にかかった費用を、専門家活用枠(買い手支援類型)の申請に廃業費として上乗せした(併用申請)。小口部門の人員は、譲り受けたWeb制作部門と連携する営業へ配置転換し、赤字部門の維持に消えていた資金も新体制の立ち上げへ。既存事業を整理して生まれたリソースを、次の柱に振り向けることができた。
ケース2:長年、飲食店を経営してきたが、後継者が見つからず、会社は清算して廃業。長年の経営で培った経験や人脈を活かし、代表者は飲食業向けのコンサルティングという別の形の事業を、個人事業として新たに始めた。会社の廃業登記や厨房設備の解体にかかった費用に、廃業・再チャレンジ枠を単独申請で充てた。
申請前に押さえたい注意点
- 補助金は後払いのため、費用は先に立て替える前提で資金計画を立てる
- 廃業・再チャレンジ計画書は書式を改変できない(セルを伸ばす等は不可、枠内に収める)
- 下限50万円を下回る小さな申請はできない。相見積・締切厳守などの手続きルールも守る
よくある質問(FAQ)
Q1. 廃業する費用だけでも申請できますか?
いいえ。廃業・再チャレンジ枠は、廃業した後に再チャレンジ(新たな法人設立・個人事業での新事業・経験を活かせる企業への就職や社会貢献など)に取り組むことが前提です。ただ廃業するだけの申請は対象になりません。
Q2. どんな取り組みが再チャレンジとして認められますか?
新たに法人を設立して事業を行う、個人事業主として新たな事業を始める、知識や経験を活かせる企業へ就職する、社会に貢献する、といった取り組みが該当します。公序良俗に反する事業などは認められません。
Q3. いくら補助され、いつ受け取れますか?
上限300万円・下限50万円で、単独申請の補助率は対象経費の2/3以内です。補助金は費用の支払い後に受け取る後払いのため、いったん自社で立て替える必要があります。
Q4. 単独申請と併用申請はどちらを選べばよいですか?
事業承継促進枠や専門家活用枠などで別途申請する事業があり、そこに廃業費を上乗せしたい場合は併用申請が向いています。廃業と再チャレンジ自体を申請したい場合は単独申請です。要件が異なるため、状況に応じて選びます。
まとめ:廃業は終わりではなく、次への区切り
廃業・再チャレンジ枠は、後継者不在やM&Aの不成立で事業をたたむ経営者が、廃業の費用を抑えつつ次の挑戦に踏み出すための補助金です。上限300万円・下限50万円、単独申請なら補助率2/3以内で、在庫処分や解体、原状回復などの実費を補助できます。一方で、再チャレンジの中身を計画として示すこと、M&A着手の証明や計画書の確認など、単独申請には細かな要件があります。自社が対象になるか、単独と併用のどちらがよいかで迷ったら、まずは無料相談でご状況をお聞かせください。要件の確認から計画書の作成、申請までを一貫してサポートします。
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