経審とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受ける審査です。正式な名前は経営事項審査といい、結果として出る総合評定値Pが、公共工事の入札参加資格の格付けのもとになります。P点は、決算書の内容と、加点になる書類の提出状況などによって決まります。2026年7月1日からは改正後の基準が適用され、加点項目が1つ増えて、減点項目が3つなくなりました。
この記事では、経審とは何かという話から、総合評定値Pの決まり方、2026年7月1日の改正で変わった4つのこと、有効期間と手数料、再審査の申立までを解説します。
経審(経営事項審査)とは|公共工事を直接請け負うために受ける審査
経営事項審査は、建設業法第27条の23に基づく審査です。条文は、公共性のある施設または工作物に関する建設工事において政令で定めるものを、発注者から直接請け負おうとする建設業者を対象にしています。
発注機関が入札参加資格を審査するときには、経審の結果が客観的事項の点数として使われ、そこに発注者ごとの評価を足して格付けが決まります。経審を受けずに公共工事の入札へ参加することはできません。
下請だけで元請にならないのであれば、受審の義務はありません。ただし加点項目の多くは審査基準日の状態で判定されるため、将来の元請参入を考えているなら決算期から逆算して準備をしておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の名前 | 経営事項審査 |
| 受ける必要がある人 | 公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業許可業者 |
| 対象になる公共工事 | 国、地方公共団体などが発注者で、請負代金が1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事 |
| 審査する機関 | 経営状況(Y)は登録経営状況分析機関経営規模等(X1・X2・Z・W)は許可行政庁 |
| 総合評定値(P)の算式 | P=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) |
| Pの最高点・最低点 | 最高2,159点最低163点 |
| 審査基準日 | 申請をする日の直前の事業年度の終了の日(直前の決算日) |
| 有効期間 | 審査基準日から1年7か月。ただし、起算日は結果通知書を受け取った日ではなく審査基準日 |
申請先は2か所に分かれる
経審はひとつの窓口で完結しません。申請の順番は次のとおりです。

図1 経審の申請の流れと申請先
点数は許可業種ごとに出る
完成工事高(X1)と技術力(Z)は許可業種別に計算されるため、総合評定値も業種ごとに出ます。土木工事業と舗装工事業の両方で許可を持っていればP点は2つ出ます。見るべきなのは、入札に参加したい業種のP点です。

総合評定値P点の算式と5つの評点
総合評定値Pは、5つの評点に決められたウェイトを掛けて足した数値です。小数点以下は四捨五入します。

図2 総合評定値Pの構成と5つの評点のウェイト
最高点と最低点は次のとおりです。
| 評点 | 審査項目 | 最高点 | 最低点 | ウェイト | 審査機関 |
|---|---|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高(許可業種別) | 2,309 | 397 | 0.25 | 許可行政庁 |
| X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益の額 | 2,280 | 454 | 0.15 | 許可行政庁 |
| Y | 経営状況(8つの財務指標) | 1,595 | 0 | 0.20 | 登録経営状況分析機関 |
| Z | 技術職員数(許可業種別)/元請完成工事高(許可業種別) | 2,441 | 456 | 0.25 | 許可行政庁 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 2,073 | ▲788 | 0.15 | 許可行政庁 |
| P | 総合評定値=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W | 2,159 | 163 | ー | 許可行政庁 |
出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」2頁
ウェイトが大きいのはX1とZで、どちらも0.25です。ただしこの2つは完成工事高と技術職員の数で決まるため、1年では大きく動きません。逆に、決算に関係なく点を稼ぎやすいのはWです。各評点の細かい計算方法は、点数を上げるポイントをまとめた記事で解説しております。
W評点の素点1点が総合評定値を約1.3点動かす仕組み
Wは、制度への加入や認定の取得、書類の提出で決まる項目の集まりです。各項目で得た点数(素点)は、2段階の換算を経てP点に届きます。
たとえば自治体と防災協定を結ぶと、Wの素点が20点入ります。この20点は、まずWの評点に換算され、そこにウェイト0.15が掛かります。素点がそのままP点に足されるわけではありません。総合評定値Pに乗るのは約26点です。

図3 W評点の素点が総合評定値Pに届くまで
換算の式は次のとおりです。
Wの評点=素点の合計×10×175/200(小数点以下は切り捨て)
10×175÷200は8.75です。素点が1点増えるとWの評点は8.75点増え、そこにウェイト0.15が掛かるので、素点1点が総合評定値を約1.3点押し上げます。素点の合計は最高237点、最低は▲90点です。
W1からW8までの配点
| 区分 | 審査項目 | 最高点 | 最低点 |
|---|---|---|---|
| W1 | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況(内訳は下の4行) | 77 | 0 |
| 建設業退職金共済制度への加入/退職一時金制度もしくは企業年金制度の導入/法定外労災制度への加入(各15点) | 45 | 0 | |
| 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況/就業履歴の蓄積措置の実施状況(各10点) | 20 | 0 | |
| ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況/自主宣言制度の宣言の有無(各5点) | 10 | 0 | |
| 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | 2 | 0 | |
| W2 | 建設業の営業継続の状況(営業年数60点/民事再生法・会社更生法の適用で▲60点) | 60 | ▲60 |
| W3 | 防災活動への貢献の状況(防災協定の締結) | 20 | 0 |
| W4 | 法令遵守の状況(指示処分▲15点、営業停止処分▲30点) | 0 | ▲30 |
| W5 | 建設業の経理の状況(監査の受審状況20点/公認会計士等の数10点) | 30 | 0 |
| W6 | 研究開発の状況 | 25 | 0 |
| W7 | 建設機械の保有状況 | 15 | 0 |
| W8 | 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 | 10 | 0 |
| 合計 | Wの素点合計 | 237 | ▲90 |
出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」3頁
営業年数は時間で決まる
W2の中心になる営業年数は、建設業の許可または登録を受けた時から審査基準日までの期間です。年未満の端数は切り捨て、休業や廃業、許可切れの期間は差し引きます。
| 営業年数 | 点数 |
|---|---|
| 35年以上 | 60 |
| 30年 | 50 |
| 25年 | 40 |
| 20年 | 30 |
| 15年 | 20 |
| 10年 | 10 |
| 5年以下 | 0 |
区分は1年刻みで1年につき2点ずつ変わるため、表にない年数は近い年数から2点ずつ足し引きすれば求められます。
出典:国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」28頁、福岡県「経営事項審査結果の総合評定値(P)の算出方法」11頁
お気軽にご相談ください
各種補助金についてのご相談をLINE又はお問い合わせフォームからお受けしています。
公式LINEアカウントの登録特典もご用意しておりますので、お気軽にご利用ください。
2026年7月1日の改正で変わった4つのこと
改正告示は2026年2月6日に公布され、2026年7月1日以降の申請から適用されています。実質的に変わったのは次の4つです。新しく設けられた項目は、改正前の欄を「ー」としています。
| 審査項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無 | ー | 5点(新設) |
| 就業履歴を蓄積するために必要な措置(民間工事を含む全ての建設工事で実施) | 15点 | 10点 |
| 就業履歴を蓄積するために必要な措置(全ての公共工事で実施) | 10点 | 5点 |
| 雇用保険の加入状況 | 未加入で▲40点 | 審査項目から削除 |
| 健康保険の加入状況 | 未加入で▲40点 | 審査項目から削除 |
| 厚生年金保険の加入状況 | 未加入で▲40点 | 審査項目から削除 |
| 建設機械の保有状況の加点対象 | 9機種 | 11機種(不整地運搬車、アスファルト・フィニッシャを追加) |
| 労働福祉の点数の算式 | Y1×15−Y2×40 | Y1×15 |
| W(その他の審査項目)の素点合計 | 最高237点/最低▲210点 | 最高237点/最低▲90点 |
出典:令和8年国土交通省告示第262号、国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」3〜6頁
建設技能者を大切にする企業の自主宣言が5点で新設された
職人いきいき宣言は愛称で、正式な名前は建設技能者を大切にする企業の自主宣言です。加点されるのは、審査基準日に元請事業者または下請事業者の立場で宣言をしていて、宣言書と誓約書を提出している場合です。発注者の立場では加点されません。必須項目には、労務費と材料費の内訳を明示した見積書の作成などが入っています。
就業履歴の蓄積措置の配点が下がった
建設キャリアアップシステムで就業履歴を蓄積する措置の配点が、どちらも5点ずつ引き下げられました。自主宣言の5点が新設された分の配分見直しなので、両方を満たせば改正前と同じ水準に戻ります。
社会保険3項目の減点がなくなった
雇用保険、健康保険、厚生年金保険の未加入による各40点の減点が、審査項目から削除されました。削除の理由は、2020年10月から社会保険への加入が許可・更新の要件になったことです。許可の有効期間は5年のため、2025年10月までにすべての許可業者が加入を確認済みになりました。素点の最低値が▲210点から▲90点になったのは、120点あった減点枠が消えた結果です。
建設機械の加点対象に2機種が加わった
不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが加わり、対象は9機種から11機種になりました。令和6年能登半島地震の応急復旧工事での活用実績を踏まえた追加です。前回は数えられなかった機械が、今回は台数に含められることがあります。加点は最大15点、14台以上で最高点です。

有効期間と手数料、申請にかかる費用
有効期間は審査基準日から1年7か月です。ただし、これは結果通知書を受け取った日からではなく審査基準日から数えての数字なので、間違えないように注意してください。毎年公共工事を直接請け負うのであれば、経審も毎年受けることになります。決算後4か月以内を目安に申請すれば、期間が途切れません。3月決算の会社なら7月末です。遅れると、前の有効期間が切れてから新しい結果通知が届くまでの間、公共工事の請負契約を締結できない期間が生まれます。
次の表の手数料は、国土交通大臣許可の業者が地方整備局に申請する場合の額です。額は建設業法施行令第27条の14第2項で定められています。都道府県知事許可なら、額も納付の方法も都道府県ごとに異なるため、許可を受けた窓口で確認してください。
経審の手数料と申請の方法(手数料は国土交通大臣許可の場合)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請の目安 | 決算終了後4か月以内。事前に決算の変更届出書の提出が必要 |
| 経営状況分析(Y)の手数料 | 各登録経営状況分析機関が個別に設定。申請先の機関に確認する |
| 経営規模等評価(X・Z・W)の手数料 | 8,100円に、審査対象建設業1種類につき2,300円を加算した額 |
| 総合評定値(P)の請求の手数料 | 400円に、審査対象建設業1種類につき200円を加算した額 |
| 手数料の合計の例 | 1業種=11,000円/5業種=21,000円/10業種=33,500円 |
| 申請の方法 | 紙のほか、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)でも申請できる |
| 結果の公表 | 一般財団法人建設業情報管理センターのサイトで閲覧できる |
出典:中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」2頁・6頁
改正前の基準で結果通知を受けたときの再審査の申立
再審査の申立ができる場面は2つあります。
①行政庁側の誤りなどで結果通知書の内容が申請内容と異なる場合
申立の期限は、結果通知書を受領した日から30日以内となります。
②国土交通大臣が定める経審の基準その他の評価方法(経営規模等評価に係るものに限る)が改正された場合
改正前の基準で結果通知を受けた申請者は、改正の日から120日以内であれば許可行政庁に申し立てができます。社会保険の未加入で減点されていた会社や、不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを保有する会社が対象になることがあります。
※ただし再審査は、出していなかった加点項目をあとから足す手続ではありません。
まとめ
経審は、公共工事を元請として直接請け負うために受ける審査です。総合評定値Pは5つの評点の加重合計で、決算書で決まる部分(X2とY)、書類と体制で決まる部分(W)、資格と受注の形で決まる部分(X1とZ)に分かれます。なかでもWは素点1点がP点を約1.3点動かすため、売上の規模にかかわらず取りにいける余地があります。2026年7月1日からは、自主宣言の5点が加わり、就業履歴の蓄積措置の配点が下がり、社会保険の減点3項目が消え、建設機械の加点対象が2機種増えました。本記事では、経審についての基本情報と2026年7月1日に改正された内容について解説しました。経審の点数を上げる方法については、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
それでは次回の記事もお楽しみにしていてください!
自社に合う補助金・融資を、
元審査員の中小企業診断士が
無料で診断します
補助金や融資は、会社の規模・業種・投資の内容によって使えるものが変わります。記事だけでは判断しにくい点も、補助金相談700社以上の経験をもとに、使える制度・申請の時期・準備するものまでお伝えします。



